一方、カバノー氏に対する質疑において共和党議員は、同氏を弁護しようとするあまり、民主党議員を激しく面罵するなど党派対決をむき出しにする場面が何度かありました。リンゼー・グラハム議員(サウスカロライナ州選出)は性的暴行容疑が人事承認審議の最終段階に出されたことを取り上げて「中間選挙を前に民主党が図った謀議だ」と激しく罵りました。同議員は、16年に行われた大統領選で一時、大統領候補になった人物です。
果たしてカバノー氏による性的暴行はあったのか、なかったのか。聴聞会では明らかになりませんでしたね。その意味で聴聞会はテレビのリアリティーショーみたいなものでしたね(笑)。
高濱:カバノー氏とフォード氏の主張は真っ向から対立しました。
まさに黒澤明監督の映画「羅生門」*2を彷彿させるものでした。
カバノー氏は愛妻家ぶりを見せつけるかのように夫人と手をつないで委員会室に入ってきて、終始、フォード氏をなじることは避けました。さらに、カバノー氏は10歳になる娘さんが同氏に「フォードさんのために神様にお祈りしているわ」と言ったことまで披露してきめの細かい演技(?)をみせていました。
カバノー氏はかつてクリントン弾劾調査を担当していた
二人の証言はどんな感じでしたか。
高濱:フォード氏は涙ながらに36年前の夜の出来事を詳細*3に証言しました。これに対して、午後の証言に立ったカバノー氏は激怒したり、涙ぐんだりして、事実関係を全面否定しました。
ちょっとわかりづらいかもしれませんが、27日の聴聞会は、午前中はフォード氏、午後はカバノー氏が証言。二人が直接対決したわけではありません。
聴聞会の模様は24時間ニュース専用ケーブルテレビ各局が実況中継しました。視聴者は1110万人に上ったと言われています。
フォード氏は長身の金髪の女性。黒っぽいスーツを着て、大きな黒縁の眼鏡をかけた、まさに女性教授然といった感じでした。緊張をほぐすためか、コカ・コーラの瓶が横に置かれていました。用意されたステートメントを、声を荒らげることもなく淡々と読み上げました。
「忌まわしい出来事」について、共和党委員を代弁して、微に入り細に入り質問するミッチェル氏に対して、きちんと答えていました。そして「暴行しようとした相手は間違いなくカバノー氏です。100%確信しています」ときっぱりと言い切りました。このタイミングで委員会傍聴席で涙を流す女性の姿がテレビ画面に映し出されました。性的暴行を受けた被害者かもしれません。
一方のカバノー氏の方はダークスーツにブルーのネクタイ。いかにも功成り名遂げた法律家といった雰囲気で、輝かしい学歴と、検事および判事としてこれまで国家に貢献してきた業績を自画自賛しました。
そして核心の容疑については「私がそんなことをするわけがない。その女性(フォード氏)には会ったこともない」と全面否定しました。
証言の中で同氏は、指名承認を求める判事候補として異例ともいえる批判を展開しました。自分の人事承認案件がこんなにこじれたのは「ビル・クリントン第42代大統領の弾劾手続き*4の際に自分が司法省でその案件に携わったことに対する民主党の仕返しであり、醜い謀議かもしれない」と語ったのです。
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