
ドナルド・トランプ米大統領が指名した連邦最高裁判事候補のブレット・カバノー氏(53)を承認するか否かで上院司法委員会が大混乱したようですね。結局、米連邦捜査局(FBI)が同氏のセクハラ疑惑を調査することになり、本会議での承認は1週間持ち越されることになりました。
高濱:国を挙げての大騒動になってしまいました。なぜここまで大騒ぎになったのか。これには二つの要因があります。
一つは、今回の最高裁判事人事において、トランプ大統領がこれまでの中道派に代えて、保守派を指名したことです。中道派のアンソニー・ケネディ判事が6月に退任。トランプ大統領はその後任に保守派のカバノー首都ワシントン連邦控訴裁判所判事を指名しました。
しかも中間選挙が1か月後に迫っているため、同大統領は議会の承認を急いでいます。万が一、中間選挙で民主党が上院を制することがあれば、カバノー氏は承認を得られなくなる可能性があるからです。
もう一つは、共和党にとって“やばい”事態が急浮上したことです。36年前、カバノー氏から性的暴行を受けたという女性が名乗りを上げたのです。これが、トランプ政権が発足して以来、勢いを増している「セクハラ告発」の火に油を注いでしまったのです。
告発者は心理学博士でパロアルト大学やスタンフォード大学で教鞭をとるクリスティン・ブラジー・フォード氏(51)です*1。
両者が「異なる真相」を明かす「羅生門」
上院司法委員会(チャック・グラスリー委員長=アイオワ州選出)は9月27日午前、フォード氏を召喚して事実関係を聴取。午後にはカバノー氏を呼び、同じように事実関係を確かめました。2人が直接対決したわけではありません。
もっとも同委の共和党メンバーは全員が白人男性。テーマが微妙なだけに議員らがフォード氏に直接尋問することはせず、「代理人」を指名しました。民主党の委員は全員自分で持ち時間内でフォード氏にもカバノー氏にも質問しています。
ベテラン記者の一人はその辺の事情について筆者に次のように解説しています。「男が寄ってたかってフォード氏にレイプ未遂があったかなかったかを問いただすのはさすがに気が引けたのだろう。それにそんなことをしたら中間選挙に向けて共和党のイメージを悪くするし、女性票が逃げてしまう。それは避けたかったのだろう」
しかし天下の司法委員会のメンバーなら正々堂々とフォード氏を尋問すればいいと思います。民主党からはそうした批判が後から出てきました。裏を返せば、中間選挙を控えて、与党・共和党は「セクハラ告発」を遮るような言動は一切取れないほど、「セクハラは罪悪だ」というコンセンサスが出来上がっている現実が見え隠れします。
共和党が選んだ「代理人」は、アリゾナ州マリコパ郡検事局のレイチェル・ミッチェル 特別被害者対策部長という女性。同氏は性的暴行を受けた被害女性や加害者から事情を聴く専門の郡検事です。同氏が、共和党各議員の質問を事前に取りまとめ、それをフォード氏にぶつける形式でした。
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