この握手はいったい何だったのか?(写真:ロイター/アフロ)

ピョンヤンで9月18~19日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長が南北朝鮮首脳会談を行いました。

高濱:北朝鮮の「非核化」に向けた大きな前進はありませんでした。「非核化」は当分足踏み状態が続きそうです。

 金委員長は文大統領だけでなく、中国とロシアの首脳を味方につけて、自信を持ち始めているのでしょうね。高飛車な態度を取っています。

 それにドナルド・トランプ大統領は、11月に実施される米中間選挙という閂(かんぬき)を掛けられていて、身動きできずにいます。米メディアも米議会も超党派で、「非核化」を棚上げにして「朝鮮戦争終結宣言」を出すことに反対です。トランプ大統領としては、北朝鮮の提案(寧辺の核施設、東倉里のミサイル発射台などの廃棄)を受け入れて「終戦宣言」を締結するわけにはいかない状況にあります。

 ちょっとショッキングな話をします。

 今、トランプ政権の対北朝鮮外交は「内部分裂」に陥っているのです。北朝鮮にどう対峙したらいいかをめぐって、トランプ大統領(個人)と政府高官との間に完全な食い違いが生じており、両者が対立している。同大統領に賛同しているのは忠臣であるマイク・ポンペオ国務長官ぐらいなもんじゃないですか(笑)

 トランプ大統領と政府高官との意見の食い違いは、同大統領が政府部内の北朝鮮政策担当者の助言を無視して史上初の米朝首脳会談に踏み切った時からこれまでずっと続いています。ですから同大統領は、「非核化」が膠着状態に入っても担当者たちを怒鳴りつけるわけにはいかない。また「米朝首脳会談は失敗だった」とは口が裂けても言えないのです。自業自得とはまさにこのことです。

北朝鮮よりも不協和音と不祥事

 米朝核交渉を取材してきた米主要紙のある外交記者はトランプ大統領の深層心理を筆者にこう解説しました。

 「トランプ大統領は、文在寅大統領がまるで金正恩委員長の『代弁者』のように振舞っていること、習近平(シー・ジンピン)国家主席やウラジーミル・プーチン ロシア大統領が陰で金委員長をけしかけていることを苦々しく思っている。腸の煮えくり返る思いだろう」

 「それに米国民にとって、米朝首脳会談も非核化入口論ももはや過去の出来事。非核化で突破口が開けない限り、この話はトランプ大統領にとって最大の関心事ではない」

 「『内憂外患』の状態にあるトランプ大統領にとっては、むしろ『内憂』のほうが大変だ。ロシアゲート疑惑をめぐる捜査が核心に迫る一方で、政権内の不協和音*1や自分自身の下半身の話*2まで露呈している。追い打ちをかけるように、大統領自身が指名した最高裁判事候補の性暴力疑惑*3がメディアの最大関心事として浮上している。眠れない日が続いているんじゃないか」

*1:ボブ・ウッドワード記者が、その著書『Fear』で、政府高官たちが大統領に対して抱くネガティブな評価や不満を暴露した
*2:不倫関係にあったポルノ女優が出版した暴露本にはトランプ氏とのセックスの様子が微に入り細に入り描かれている。
*3:トランプ大統領が最高裁判事に指名した保守派ブレット・カバノー氏が高校生だった時に暴行未遂を起こした容疑が浮上。上院司法委での指名承認が暗礁に乗り上げている