トランプ大統領の考えは「米兵はアフガニスタンから1日も早く引き揚げるべきだ」と単純明快です。しかし、情勢が悪化する中で直ちに撤退はできません。好転させるには増派せざるを得ない。マティス国防長官は少なくとも3000人の増派が必要だと見ています。

 全権移譲されていたマティス長官が増派を決めれば実地に移されるはずだったのですが、最近になってトランプ大統領がその全権を取り上げてしまいました。最終決定は国家安全保障会議(NSC)の判断にゆだねることになりました。

 マクマスター補佐官は、マティス長官の意見に賛同しています。しかし、バノン氏がこれに横やりを入れている。バノン氏は「われわれは勝っている。だから引き揚げろ」という考えです。トランプ大統領はバノン氏の考えに賛同しているふしがあります。

バノン氏が大統領の耳元でなにやら囁いているのが目に浮かぶようですね。ケリー首席補佐官としては、バノン対マクマスターの確執を和らげ、ウエストウィングに秩序を取り戻すことが最初の腕の見せ所ですね。

高濱:悪いことに、バノン氏の主張を超保守系メディアがリングの外で支援しています。バノン氏の古巣であるブライトバード・ニュースはじめ、FOXニュースでホストを務めるショーン・ハニティ氏たちです。同氏はトランプ支持のハードコアです。

 こうしたメディアは8月に入って「マクマスターはオバマ政権からの生き残りに追従している」「マクマスターは本当にトランプ支持者なのか」などと批判し始めています。集中砲火を浴びせているのです。
”The War Against H. R. McMaster," Rosie Gray, The Atlantic, 8/4/2017

大統領がほのめかす「マクマスター・アフガン駐留米軍司令官」説

トランプ大統領はどちらの肩を持っているのですか。

高濱:心情的にはむろん、バノン氏を信頼しています。ただマイケル・フリン氏が大統領補佐官(国家安全保障担当)を辞任したあと、マクマスター将軍を三顧の礼で迎え入れたのですから、そう簡単に更迭するわけにはいきません。それにマクマスター氏は軍事問題の権威、文武両道兼ね備えた学者将軍です。

 トランプ大統領は最近になって、「アフガニスタンの戦局が好転しないのは、ジョン・ニコルソン司令官の責任だ。奴を更迭して別の将軍を送れ」といい出しました。これもバノン氏の入れ知恵でしょうね。

 直接の上司であるマティス長官や国防総省(ペンタゴン)の制服組最高幹部はニコルソン司令官の続投を主張して反発しています。

 こうした状況の中でトランプ大統領は、ニコルソン司令官を更迭し、その後釜になんとマクマスター補佐官を送ることを考え始めたといわれています。

となると、マクマスター氏の後任は誰になるのですか。

高濱:マクマスター補佐官の後任には、マイク・ポンペオ米中央情報局(CIA)長官(*3)を横滑りさせるというのです。米メディアは「ホワイトハウスのドミノ現象」と呼んでいます。
*3:ポンペオ氏は下院議員。米陸軍士官学校卒の退役陸軍大尉、ハーバード大法科大学院卒の弁護士。マクマスター氏の後任になれば、引き続き軍人出身者が大統領補佐官(国家安全保障担当)になる。

マクマスター補佐官の反応はどうですか。

高濱:マクマスター補佐官は、NSCの人事刷新を終えたばかりです。ロシアゲート疑惑で事実上解任されたフリン前補佐官が引き連れてきた人材を一掃しました。

 7月末までに、上級部長のエズラ・コーエン・ワトニック氏、情報担当首席補佐官のテラ・ダール氏、中東政策補佐官のデレク・ハービィ氏、戦略担当部長のリッチ・ヒギンズ氏を更迭しました。
"White House purging Michael Flynn Allies From National Security Council," Glenn Thrush and Peter Baker, New York Times, 8/2/2017

 マクマスター補佐官としては、自前のスタッフを集めて、さて仕事を始めようとしていた矢先に、“戦場送り”になる可能性が浮上したわけです。相当、頭にきているのではないでしょうか。戦場送りにされるようなら辞表を叩きつけるかもしれません。

なるほど、ホワイトハウスが混乱している最大の要因が大統領自身であることが手に取るようにわかります(笑)。それでこれからどうなるのですか。

高濱:「神のみぞ知る」ですね。

 しかし、トランプ大統領にとっては、お膝元の内紛どころじゃない状況が続いているのです。内政・外交もさることながらロシアゲート疑惑に対する捜査が新たな段階に入りました。

 ホワイトハウスの「ドミノ現象」が続く中で、ロバート・モラー特別検察官がロシアゲート疑惑をめぐって大陪審を招集したことが3日に明らかになっています。捜査は当面、トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏とロシア人弁護士の面会(16年6月9日)などロシア側との接触が焦点になっているようです。

 トランプ大統領はモラー特別検察官を捜査から外す可能性を否定していません。同特別検察官を解任するのではないのかといった憶測も消えていません。

 内憂外患、17日間もゴルフなぞしている余裕はないはずです……。打つ手なしだからゴルフ三昧しかない、のかもしれませんが。注目はこれからの17日間、トランプ大統領がツイッターで何を発信するかですね。