「主要メディアはヒステリックな精神異常者」

 もう一人、保守派の論客でハニティ氏の番組にしばしば出演しているマーク・レビンというテレビ番組の司会者などは、トランプ大統領を激しく批判する主要メディアに対して吐き捨てるようにこう言っています。

 「プーチン大統領に尊敬の念を表したからといって『トランプ大統領は国賊だ』などと叫ぶメディアは反社会的な精神病患者。ヒステリックな精神異常者以外のなにものでもない」
"Levin Slams Media for 'Hysterical, Insane Attack' on Trump After Putin Summit." Fox News Insider, 7/18/2018 )

 「国賊」呼ばわりに反発して「精神異常者」呼ばわりするというのはなんとも大人げないですけれど、いま両極に分かれた米メディアの事情を如実に表しています。米国民も二つに割れていて、自分の好みのメディアしか見ない、読まない。トランプ政権をめぐる国論が二分しているのも頷けるというものです。

なるほど。しかし西欧の同盟国は、やはり米主流メディアの報道や解説の方を信じているのでしょうね。ということはトランプ大統領に対する不信感と今後に向けての警戒感を強めているのだと思いますが。

高濱:西欧の同盟国だけではありません。当事者のロシアや、貿易戦争が悪化の一途をたどり始めている中国だって、「トランプというこの男は何を考えているのか」と首をかしげているのではないですか。

 日本はどうなのですか。安倍政権はどうみているのでしょう。大統領になる前の2011年にトランプ氏が書いた『Time to Get Tough』(邦訳『タフな米国を取り戻せ:アメリカを再び偉大な国家にするために』=2017年刊行)の中で、中国に対する警戒心を怠るなと警鐘を鳴らしています。

 トランプ氏を熱烈に支持する者の中には「当時と今と姿勢が全くぶれていない。終始一貫している」と褒め上げる人たちもいます。

 もっとも一流ジャーナリストの中には、「終始一貫しているのはそれ以後起こっていることを一切勉強していないからだ」と皮肉る者もいます。

確か、トランプ大統領がニューヨーク・タイムズ一面を費やして掲載した意見広告には厳しい対日批判が盛り込まれていましたね。ということは、トランプ大統領はいずれ、日本の「防衛ただ乗り論」などを持ち出すことになりますね。

行き当たりばったりこそがドクトリン

高濱:トランプ大統領が5年前、10年前に信じていたことを今も変えないのであれば、厳しい対日要求は当然出てくるでしょう。問題は、誰に何も言われても変わらないトランプ氏の深層心理がいつどこで表に出てくるかです。

 グローバルな状況を分析し、予測する「ジオポリティカル・フューチャーズ」というオンラン・サービスがあります。創設者で所長を務めるのはジョージ・フリードマンという地政学者。同氏は親トランプでも反トランプでもありません。

 この人が米ロ首脳会談を前に「トランプ・ドクトリン」とは何か、という小論文*を書いています。要旨はこうです。「トランプ大統領のドクトリンがあるとすれば、米国が軍事行動を起こさねばならないような危険な状況を攻撃的な経済政策によって和らげる。こうした米国の政策に他の諸国が異議を申し立てても無視して政策を遂行するというのがトランプ・ドクトリンだ」

 「北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するためには武力行使か、現状を渋々受け入れるか、それとも交渉によって解決するかの3つの選択肢しかない。金正恩委員長と会ったのはある種の理解を得るためだ」

 「ロシアに対しては、積極的な攻撃性、受動的忍耐、外交交渉上の駆け引きの3つの選択肢のうち、外交交渉を前提としたプーチン大統領との首脳会談を選んだわけだ。トランプ大統領は就任した当初、金正恩委員長やプーチン大統領に会うことなど計画していなかったはずだ」

 「最初から壮大な外交構想を描いてそれに沿って外交を動かしていく歴代大統領もいたにはいた。しかしトランプ大統領は異なる。トランプ大統領は、新たなリアリティーに直面するや、これまでの政策や路線は一切無視して、戦術的に動く」
(*"The Trump Doctrine," George Friedman, Geopolitical Futures, 7/11/2018 )