また「BLMの活動に理解を示す」と答えた黒人は70%、白人は37%でした。
("Race Relations Are at Lowest Point in Obama Presidency, Poll Finds," Giovanni Russonello, New York Times, 7/13/2016)

オバマ氏が大統領になって、なぜ人種問題は悪化したのですか。

高濱:カリフォルニア大学アーバイン校のマイケル・テスラー教授は次のように指摘しています。「オバマが大統領になって白人は、オバマ政権は黒人に有利な政策を取るのではないかと警戒心を持ち始めた。白人の論理はこうだ。<黒人大統領だから『人種差別が白人と黒人の貧富の差を生んでいる』と考えるに違いない>と」。

 「基本的には白人の大半は、オバマが嫌いだ。それをスレートには口に出せない。というのも白人が黒人に対して持つレイシズムは米国内で最もパワフルなタブーになっているからだ」

 「そこで白人はなんと言っているか。いまだに<オバマは外国生まれだ><オバマはイスラム教徒だ>と信じて疑わない白人がそれぞれ20%、29%もいる。<オバマは黒人だから嫌いだ>という代わりに、こうした表現で嫌悪感を表していると言える」
("For Whites Sensing Decline, Donald Trump Unleases Words of Resistance," Nicholas Confessore, New York Times, 7/13/2016)
("One in Five Americans Still Think Obama is Foreign-Born, According to Poll," Sam Frizell, Time, 9/14/2015)

 こうした白人のホンネは、今回のように白人警官が黒人に射殺されると爆発します。オバマ大統領は7月12日、テキサス州ダラスで射殺された警官5人の追悼式に出席しました。同大統領は席上で「米国の刑事司法制度には人種による格差が存在する」と明言しました。それをとらえて、白人保守派の一部は「殉死した警官の追悼式の席で不適切な発言だ」と激しく批判しました。

「暴力の連鎖を断ち切るうえで最大の障害になっているのは人種差別と銃だ」と指摘する識者が少なくありません。

高濱:その通りだと思います。公の場での人種差別を一掃するにはさらなる措置が必要かもしれません。

 まず学校教育です。人種差別をなくす教育は小学校からです。

 次に警察官への教育。米国の警察機構は州単位、群単位で警官を育成します。「法と秩序」を守る公僕としての自覚と常識を、州や郡のポリス・アカデミー(警察学校)で徹底する必要があります。

 銃の問題は、独立戦争の時から米国人が堅持してきた「武器を保持する権利」への執着が背景にあります。この権利は憲法修正第2条に明記されています。侵略してきた英国兵士から自分と家族を守るために、農民も商人も銃を取り戦った歴史があるのです。自分の身は自分でしか守れないという信念なのです。我々日本人にはなかなか理解できないことなのですが。

 銃愛好家は全米に1億人います。彼らを束ねるロビー団体「全米ライフル協会」(NRA=会員数約500万人)が民主・共和両党の垣根を超えて政治家たちを支援しています。

 銃による殺人を少しでも減らす手短な対処策は、AK-47の販売・所持を禁止する銃規制法(1994年に10年間の時限立法として成立、その後廃止)を復活させることです。AK-47は、最近起きている多くのテロや乱射事件に使われているもの。クリントン氏はこの政策を実行すべきと予備選段階ですでに言及しています。

次期大統領になりうるクリントン氏、トランプ氏は「人種戦争」についてどんな発言をしているのですか。

高濱:クリントン氏は、相次ぐ警察官射殺事件を受けて、「われわれは暴力を拒否し、社会で結束していくべきだ」「米国を分断させるのはトランプ氏だ」と訴えています。

 一方のトランプ氏は、自身のツィッターで「米国は犯罪に引き裂かれ、悪くなるばかりだ」「法と秩序を徹底させる大統領は私以外にいない」と指摘しています。

 一方のトランプ氏は、共和党大統領候補指名受諾演説で、こう述べています。
「われわれ(トランプ大統領と共和党)はこの国を安全と繁栄と平和の国へと導く。寛大さと温情のある国へ導く。そして法と秩序の国にさせる」。

 「われわれは国家が危機にある時にこの党大会を迎えた。われわれの警察官は攻撃を受け、街はテロに襲われ、われわれの日常生活は脅かされている。この危険さを把握できない政治家は我が国をリードするのには適していない」

 「今晩、私の演説を聞いている米国民は、われわれの街で最近起こっている暴動の現状や、われわれのコミュニティが無秩序な状況に置かれていることを知っている。その多くは、自らそれを目撃しているだろうし、その犠牲者もいるにちがいない」

 「あなた方(米国民)への私のメッセージはこれだ。わが国を今悩ましている犯罪と暴力はまもなく終わりを告げるだろう。17年1月20日(私が大統領に就任する日)2017年1月20日、安全は回復されるだろう」
(" Donald Trump's prepared speech to the Republican National convention, annotated," Philip Bump, Washington Post, 7/21/2016)

 米国人が「法と秩序」という表現を使う時、それは国家権力に対する非合法な活動の取り締まり強化を意味します。おそらくトランプ政権はMLB運動に対して、徹底した警察力の行使をすることになるでしょう。黒人はこれに反発するでしょう。「人種戦争」は激化するに違いありません。

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