もう一つ、ヘッカー博士が指摘している重要な点があります。同博士が「短期的に必要不可欠な要素は米国と北朝鮮が信頼関係を築き上げ、相互依存関係を確立することだ」と強調していることです。

 「米国はロードマップを実施に移す過程で北朝鮮が望んでいる原子力平和利用、つまりエネルギー、医療、宇宙平和開発部門での活用に理解を示すこと。そうすることで、北朝鮮は、国際原子力機関(IAEA)が派遣する検査官受け入れ、モニタリング設備の設置などに積極的に協力できるようになる」

 今回設置が決まった作業部会には、北朝鮮が求める「安全の保証」や経済・エネルギー面での協力が話し合われる部門も含まれることになるでしょう。どちらも、6カ国協議が2007年2月に取り上げた項目です。米朝直接協議の流れの中で6カ国協議の再開へ移行することも考えられます。すでに中国はそれを強く主張していますし。

ポンペオ長官訪朝の結果を受けて、トランプ大統領はこれから対北朝鮮でどう動きますか。

高濱:トランプ大統領周辺は、金委員長との第2回会談がニューヨークで開かれる可能性を意図的に流しています。9月の国連総会に金委員長が出席する際(出席するか否かは不明)にトランプ大統領と会談するというのです。
"Scoop" Trump may hold Round 2 with Kim Jong-un in NYC," Mike Allen. www.axios.com, 7/2/2018)

 ポンペオ長官が示した「FFVD」提案を金委員長が秋までに実行に移せば、「トランプ大統領がその褒美として金委員長に<人参>をやるようなもの」(Axiosのマイク・アレン記者)だというのです。国際外交の檜舞台に金委員長を“招待”し、お披露目してやってもいいぞ、ということ。随分と上から目線の話ですけど。

トランプ大統領としては中間選挙を意識した思惑もあるんじゃないですか。

高濱:その通りです。シンガポールで演じた「歴史的なパフォーマンス外交」を今度は米国、自分の地元ニューヨークでやることでやんやの喝さいを浴び、支持率を上げ、その2カ月後に迫る中間選挙への好材料にしようという魂胆のようです。

 6月12日の米朝首脳会談について、米国民の55%が高く評価しました。果たして「柳の下に二匹目のドジョウ」がいるかどうか。米一般国民はもう北朝鮮なんかに関心を示さなくなってきていますから。
AP-NORC Poll: Majority approve of Trump's North Korea effort," Emily Swanson, Associated Press, 6/21/2018)

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