ただ、トランプ氏は型破りの、政治経歴ゼロの人物です。これまで、発言を繰り返し朝令暮改しています。前言を平然と覆したことも少なくありません。

 党大会ですんなりと大統領候補に選出されることを優先し、保守穏健派の主張をハイハイと受け入れる可能性は十分あります。この点は、ふたを開けてみないとわかりません。

頑固なカーターは「在韓米軍撤退」をあきらめず

過去の民主、共和両党大会でも、党大統領候補と党主流との間で意見が大きく食い違うことがあったと思います。そうした場合、どちらの主張が盛り込まれましたか。

高濱:大統領候補と党主流派とが真っ向から対立した前例があります。76年の民主党大会の時です。リベラル派のジミー・カーター前ジョージア州知事(第39代大統領)が予想に反して予備選で勝利しました。

 カーター氏は予備選段階から在韓米軍撤退を声高に主張していました。綱領委員会の審議でもカーター陣営はその主張を曲げず、結局、「在韓米軍を段階的に削減し、在韓核兵器を撤去できる」という文言を綱領案に盛り込むことに成功しました。党大会はこの案をそのまま採択しました。

 もっとも党主流派も激しく抵抗し、「細心かつ注意深い計画に基づき」という文言を入れさせた。さらに「この地域における戦術空軍力と海軍力を強固に維持することで」と前提条件を綱領に付け加えました。逃げ道を残したわけです。
("Democratic Party Platform of 1976," The American Presidency Project, 7/12/1976)

カーター大統領はその後、在韓米軍の撤退に踏み切りましたか。

高濱:カーター氏は大統領就任後、国家安全保障会議あてに「大統領検討メモ」を送付。その中で、在韓米軍のうち第二歩兵師団を撤退させるよう指示しました。

 これに日韓両政府や、ワシントンの米軍事専門家たちから非難の声が上がりました。それでもカーター大統領は公約通り、韓国からの米軍削減に固執し、78年には在韓陸軍一大隊(3500人)を引き揚げさせました。

 そして79年7月にはズビグネフ・ブレジンスキー国家安全保障担当補佐官が国際情勢の変化に呼応して「大統領は在韓米軍撤退計画を破棄した」と発表し、この問題はケリがつきました。なぜなら、これを機にカーター大統領は在韓米軍撤退計画について一切言及しなくなったからです。
("The Seventh withdrawal: has the US forces' journey bakc home from Korea begun?," Alon Levkowitz, International Relations of the Asia-Pacific Volume 8, 2008)