トランプ大統領が主張する「非核化」は進展したのか
米朝首脳会談で「非核化」は進展したのでしょうか。
高濱:共同声明だけではその辺がはっきりしません。これから議会やメディアが徹底検証することになるでしょう。
非核化が具体的に進むためには北朝鮮がいつからいつまでに核を破棄するというスケジュール表が必要です。
米国にとっての最善のシナリオは、北朝鮮が保有している核兵器を「CVID」することです。このことが共同声明に明記されていないのが気がかりです。
百歩譲って、共同声明に盛り込まれた事項をこれから進めていくのに不可欠なことを考えた場合、「核兵器を廃棄するための具体的で筋の通った共通の目標、組織、原則を明確に示す必要がある」と指摘しています。
("A Peace Treaty for the Korean peninsula: Will the Past be Prologue?" Charles Kartman, 38 North, 6/11/2018)
拉致問題はトランプ大統領の「リップサービス」?
最後に安倍首相が最後の最後までトランプ大統領に懇願した拉致問題について、米朝首脳会談で言及したのでしょうか。
高濱:トランプ大統領は記者会見で、「金委員長との会談で拉致問題について言及した」と明らかにしました。同大統領は、会談前に安倍首相と電話でやりとりした際、「必ず取り上げる」と確約していました。
会談と直接関係はないのですが、ワシントン外交筋からこんな話を聞きました。「トランプ大統領が拉致問題を持ち出すと言ったのは、安倍首相の国内的立場をおもんぱかったリップサービスだ。米国が北朝鮮に『日本人を返せ』とは言えない。米国にとって日本人の拉致被害者救出問題は、非核化や対北朝鮮経済制裁解除に比べて優先すべき問題ではない。口利きはするが、実際に北朝鮮と交渉するのは日本政府。交渉は日朝首脳間でやってくれ、ということだ」
「もう一つ、米政府内部には、北朝鮮が終始言っている『拉致問題は解決済み』という立場に留意する者もいる。つまり、日本政府は拉致被害者の存否に関する諸情報を徹底調査する必要があるというのだ」
「世紀の首脳会談」の第1幕は一応幕を閉じた。すでに米メディアから批判が上がっている。再び幕が開くのはいつか。ワシントン政界筋の間では「中間選挙直前」といった臆測が早くも飛び交っている。
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