米上院公聴会での証言に臨み、宣誓するコミー氏(写真:AP/アフロ)

ジェームズ・コミー米連邦捜査局(FBI)前長官が8日、上院情報特別委員会(リチャード・バー委員長)で行った証言をどうみますか。

高濱:コミー氏がFBI長官を解任されてから初めての議会証言とあって、米国内は朝から騒然としていました。主要テレビ局はみな生中継しました。朝から視聴率はうなぎ上りとなり、さながら「アメフトのスーパーボウル並み」(ロイター通信)になったそうです。

 公聴会が開かれた上院オフィス・ビルには傍聴希望者が早朝から詰めかけ、長い列ができました。議事堂近くのパブは公聴会のテレビ中継を観る客でごった返していたそうです。

 なぜか。理由は「単純明快」です。

 「ロシアゲート」疑惑を捜査中のFBI長官(当時)がドナルド・トランプ大統領によって突然解雇されたのですから、米国民がその長官(しかも人望も実績もある人物)から事情を聴きたくなるのは当然です。

 トランプ氏は大統領に就任する前からコミー氏を解任するまでに、面談で3回、電話では6回話をしています。その内容はメディアが断片的に報じていますが、解雇後、コミー氏本人が公けの場で証言するのは初めてです。しかも宣誓証言です。虚偽の証言をすれば起訴されます。

 全米に衝撃が走ったのは、そのコミー氏が冒頭で、吐き捨てるようにひと言、言った瞬間でした。「大統領は、私を解雇した理由を『FBIを統率するリーダーシップが欠如しているからだ』と言っている。大統領は嘘をついている。それは単純明快だ(Lies, plain and simple)」

 「You lie」(嘘をつく)という表現は米国社会では禁句中の禁句。ことと次第によっては、言われた相手はとびかかってきます(笑)

 筆者と一緒にテレビ中継を観ていた米国人ジャーナリストはこう「解説」してくれました。「ののしり合いをしていても相手に向かってLiarとはなかなか言わない。それを1か月前にはFBI長官だった人物が、こともあろうに大統領に向かって言ってのけたんですから」

 「トランプ大統領は何事につけ大言壮語する。信ぴょう性のない発言をすることが多々ある。米国民はそういった先入観を抱いている。そうした素地がある中で、天下の前FBI長官から嘘つき呼ばわりされた。ひとつ嘘をつけば、すべてが疑われる。ロシアゲート疑惑の個々の事案の是非はともかくとして、『嘘つきトランプ』のイメージがこれで完全に定着してしまった」

コミー氏は、トランプ大統領が何について「嘘をついた」と言ったんですか。

高濱:トランプ大統領はコミー氏を解任した理由として「FBIを統率できておらず、同僚や部下たちの信頼を失っている。FBIは混乱状態にある」と発言していました。コミー氏は「それは嘘だ」と反論したのです。そして「私を解任した理由は『ロシアゲート』捜査と無関係ではないと思う」とまで言い切ったのです。

コミー氏は証言の前日の7日、大統領との面談や電話の内容について克明に記したステートメントを、情報特別委員会を通して公表しました。それに続けて、8日には「嘘つき」発言。トランプ大統領は窮地に立たされたと見ていいのでしょうか。

前FBI長官議会証言の3つのポイント

高濱:現時点で言えることは、大統領の「司法妨害」容疑は深まったものの、この証言だけでは「スモーキングガン」(決定的な証拠のようなもの)とはいえない、ということです。バトンは、上院情報特別委員会から、捜査を続ける特別検察官の手に渡ったと言えそうです。

 コミー証言で注目されていたポイントは3つありました。一つ目は、捜査対象になっているマイケル・フリン大統領国家安全保障担当補佐官(当時)に対する捜査を中止するよう、トランプ大統領がコミー長官(当時)に指示あるいは命令したか否か。命じたとすれば「司法妨害(Obstruction of Justice)」の疑いが出てきます。

 二つ目は、コミー長官に対し、「自分に対する忠誠」を誓うように強要したか、否か。「忠誠を誓えばFBI長官を続投させる」という意味の発言をすれば、大統領がFBIの独立性を侵害したことになります。

 そして三つ目は、FBIによる「ロシアゲート」事件全般についての捜査を中止するよう、トランプ大統領が指示したり、命じたりしたのかどうか。命じたとすれば、明らかな「司法妨害」となります。