党機関紙の社説が意味するものはなにか?

 中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「Global Times」(環球時報=4月28日付)が、こんな社説を掲載しました。「北朝鮮が核・ミサイル開発を継続するならば、中国は、国連安保理によるさらなる厳しい制裁決議を支持するべきだ。北朝鮮による核保有は中国の国益に反している」
("China must be ready for worsened NK ties," Global Times, 4/27/2017)

習近平主席の対北朝鮮スタンスが変化しているのを反映しているかのようですね。

高濱:そうだと思います。この新聞は中国国内向けではなく、在外の華僑向け新聞です。「観測気球」的な側面も持っています。

 ロンドンの戦略問題研究所(IISS)が4月28日にあるレポートを発表しました。タイトルは「米朝関係」(China-North Korea relations)。前述の「ストラトファー」の記事とともに、今ワシントンの外交専門家の間で注目されている論文(IISS Strategic Comments)です。筆者の名前はありません。おそらく世界各国から集まっている中国・北朝鮮専門家が討議したものをまとめたものだと思います。
("China-North Korea relations and the 19th Party Congress," IIAA Strategic Comments, IISS, 4/28/2017)

 刮目すべきは、習近平主席が今おかれている国内状況に言及している点です。

 「北朝鮮の核実験はなかった。一番胸をなでおろしている中国の習近平ではないだろうか。中国では第19回党代表大会*が開かれる。習近平の2期目の政権が誕生することはまず間違いないだろうが、問題は執行部にどれだけ多くの習近平派を送り込めるか、だ」
*:第19回党代表大会=執行部(政治局常務委員)メンバー7人のうち習近平主席、李克強首相を除く5人が「年齢制限」(就任時点で67歳以下という不文律)を超えるため引退する。このうち4人は「江沢民人脈」と見られている

 「習近平はこれまで軍と中央委員会における地盤を固めるのに成功してきた。だが、引き続き現状を維持できるかどうかは予断を許さない。そのカギを握っているのが、北朝鮮問題と米中関係だ。北朝鮮問題では、いかにして『もっともらしい対北朝鮮戦略(One plausible strategy for dealing with North Korea)』を実践できるか否かにかかっている」

 「ポストをめぐって、これから秋にかけて権力闘争が激化する。そのためにも習近平は北朝鮮問題で、そして対米政策において、絶対に失敗は許されないセンシティブな時期に直面している」

 「習近平が朝鮮問題で強力な行動に踏み切れるのは、秋以降になることだけは間違いない。それまで習近平はいかに現状(悪化の一途を辿ってはいるが)を維持するか、ステータス・クオー(現状)を引き延ばすか、だ」

 「北朝鮮が核武装するのは時間の問題になっている。その結果、極東における米軍のプレゼンスはより強化されるし、日韓はともにその軍事力を強化する。中国にとっては短期的には北朝鮮の核開発を遅らせる用心深い戦術が必要になってくる」

 トランプ大統領の振り上げた「拳」の落としどころはどこか。金正恩委員長が「核開発を止める」と宣言することだろう。そうなれば、かっての6カ国協議を復活させる可能性も出てくる。このシナリオは習近平主席にとってもベストに違いない。

 だが今のところ、「落としどころ」への筋道は視界ゼロ。習近平体制が盤石になる秋に向けて何が起こるのか。「米朝開戦」の時限爆弾を抱えながら視界ゼロが続きそうです。