北朝鮮が核実験をしなかったことについてティラーソン長官は、27日のフォックス・ニュースとのインタビューに応えて、こう述べています。「北朝鮮は、『もし核実験をやったら我々は独自の制裁を科す』と中国から脅されたのだ」
("Interview with Bret Baier of Fox News," Rex Tillerson, U.S. Department of State, 4.27.2017)

 トランプ大統領も21日のインタビューで、この点について「習主席とはすばらしい関係にある。中国は北朝鮮への対応を強めている」と暗に認めました。
("Transcript of AP interview with Trump," AP, cnbc.com., 4.24.2017)

対北朝鮮制裁で「人道上の物資支援」打ち切りも要求か

こうした動きを踏まえてトランプ大統領はこれからどうしようとしているのですか。

高濱:国際軍事政治分析で定評のある「ストラトファー」社(本社テキサス州ヒューストン)は4月25日付に公表した「アセスメント」(情勢分析)でこう分析しています。

 「トランプ政権は当面、①朝鮮半島での軍事力堅持②国連安保理での対北朝鮮制裁強化――の二つを同時並行的に行うことになる」

 ここに特に新味はありません。この作戦の主要ファクターとなるのは中国への具体的な対応策についての次の記述です。

 「北朝鮮に核・ミサイル開発を止めさせる上で最も影響力を持っているのは依然として中国だ。その中国に対して米国はアメ(経済通商スタンスの軟化)とムチ(北朝鮮に対する一方的単独軍事行動の用意)をちらつかせる。北朝鮮が暴発すれば米国だけでなく中国の国益にも反することを、口を酸っぱくして中国に言い、理解させなければならない」

 「これまでの対北朝鮮制裁には『抜け道』(Loophole)があった。中国はこれまで適切な措置をとっていない――中朝国境地域における石油、石炭、鉄鋼、燃料、為替などの貿易・金融の業務取引、人道上の物資支援、武器弾薬等の密輸などを許している。この点について徹底的に遵守することを今こそ中国に求めるべきである」
(https://worldview.stratfor.com/article/china-solution-north-korean-problem)

米軍事包囲網から中国を守る「緩衝地帯・北朝鮮」

対北朝鮮制裁として米国が求める要求に中国は応じるでしょうか。

高濱:確かに中国にとって北朝鮮は、朝鮮戦争以来の「血で固めた友誼の同盟国」です。そうした歴史的な関係もさることながら、北朝鮮は現在の地政学上からも中国にとって不可欠な「特別な国」です。

 国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたこともあるビクター・チャー博士(米戦略国際問題研究所=CSIS)はこう述べています。「中国にとって必要なのは東アジア地域における戦略的安定だ。同地域には米国の軍事同盟国の日本と韓国がある。戦略的安定は、朝鮮半島に北朝鮮が存在することで保たれている。トランプ大統領はこの状況を何としても変えようとしている。だが中朝関係は危機が起こらない限り揺るがない」
("A reckless North Korea remains China's useful ally," James Kynge, The Finacial Times, 4/18/2017)

 つまり中国は、核武装した北朝鮮は受け入れがたい。けれども北朝鮮という国家が崩壊することだけは避けたい。崩壊して、韓国に併合されれば、「統一朝鮮」は米国の核の傘に入ってしまう。中国は「核保有国・北朝鮮」よりもそのことを恐れているのです。北朝鮮は中国にとっては「バッファー(緩衝地帯)」の役割を果たす重要な国家なのです。