良くて「輸出制限問題は秋以降まで棚上げ」
そこでマールアラーゴで行われる2回目の日米首脳会談です。トランプ大統領はどう出るのでしょう。
高濱:日米首脳会談を占うべく、3人の専門家に聞いてみました。主要シンクタンクの上級研究員A、ベテラン外交記者B、元国務省高官Cの3人です。
A氏とB氏はほぼ同意見。
「トランプは『森友スキャンダル』については見て見ないふりをするのだろう。それはそれ、これはこれ、で、『米国第一主義』を貫き通す。つまり中間選挙(で与党共和党候補を勝たせる)や自分に降りかかっているスキャンダルを振り払うため、日本も輸入制限措置の対象国とすると安倍に言い放つ」
唯一、C氏は棚上げ論を主張しました。「ここは苦境に立っている安倍に恩を売る。首脳会談では輸入制限措置の決着は棚上げ。今秋以降に再協議することで合意する。安倍は9月30日には自民党総裁選。トランプは11月6日中間選挙を控えている。トランプは当面、中国との貿易戦争に手いっぱいで、日本にまで気が回らないだろう」
トランプ大統領はこれまで安倍首相を「buddy」(相棒、兄弟)と呼んで世界の指導者たちの中で最も信頼できる友として扱ってきました。だとすれば、ここは困ったときに助けてくれるのが「真の友」といった感じもするのですけど。
高濱:その話を前述のA、B、Cの各氏にしましたが、相手にされませんでした(笑)。
まず、トランプ大統領という男には真の友達などいない、と言うのですね。トランプ氏と数十年にわたる付き合いのある人物の何人かが「トランプは自分に得をもたらす人間を『友』と言うだけ」と言っているのだそうです。
トランプにとって「安倍は既に用済み」?
ストレートな表現をすれば、トランプ大統領は安倍首相を散々利用するだけして、反対給付はないだろうというのです。そのことをズバリ指摘しているのが政界専門オンライン誌『ポリティコ』のウィリアム・ぺセク記者です。
「トランプの相棒は、相棒だったことを後悔し始めている。安倍はトランプに対して誰よりも強く“求婚”してきたのに、今やそれほどホットではなくなってしまった」
同記者の見立ては次の通りです。安倍首相が懸命に働きかけたにもかかわらず、トランプ大統領は就任から1年を経て、①貿易戦争をエスカレートさせ、②北朝鮮ににじり寄り、③中国の習近平国家主席といちゃついている。
「安倍首相の支持率は今や30%台に下がってきた。その理由として森友学園への国有地売却に絡むスキャンダルとの関連が取りざたされている。またトランプ大統領との(緊密な)関係がネガティブ要因になっているのかもしれない」
「政治学者のブラッド・グロサーマン氏はこう分析している。『安倍首相がトランプ大統領との密接な関係によって得た利益はなんらなく、それによって生じたライアビリティー(負債)を一身に背負っている』」
安倍首相にしてみれば、「北朝鮮の核・ミサイル開発阻止で最大限の協力をしてやったのだから俺が政局運営で窮地に陥っている今、手を差し伸べてくれてもいいはずだ」という思いがあるかもしれません。しかし「自分のことしか考えたことのないトランプに恩義などは通用しないよ」(米主要メディアのホワイトハウス詰め記者)という意見があることは付け加えておきたいと思います。
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