トランプに不利に働く「指名推薦人」制度

 共和党保守本流は今後どのように対応するのか。それを占ううえで、重要なのが「Emdorsement Primary」(指名推薦人)の動向です。

 これまで紹介した獲得代議員は、一般党員による投票で選ばれた代議員です。ところが、前回お話しした通り、共和党にも「特別代議員」がいます。共和党では「指名推薦人」と呼ばれます。彼らは予備選での投票結果とは関係なく、自分が推薦する候補者に党大会で一票を投ずることができるのです。指名推薦人になるのは党所属の上下両院議員、州知事たちです。

 ニューヨーク・タイムズの選挙予測・分析サイト、「FiveThirtyEight」は候補ごとの「指名推薦人」獲得状況をポイント制で評価して紹介しています。他の代議員に対する影響力か強い上院議員は1人5ポイント、下院議員は1人1ポイント、知事は1人10ポイントで計算します。

 ミニ・スーパー・チューズデー直前までの結果は以下のようでした。
 ルビオ上院議員     168ポイント
 クルーズ上院議員    50ポイント
 ケーシック知事     32ポイント
 トランプ氏       29ポイント

 予備選では快進撃を続けるトランプ氏も、獲得した指名推薦人は上院議員が1人、下院議員が4人、知事が2人に留まっています。

 この調査ではルビオ氏がダントツでした。2位はクルーズ氏、3位はケーシック氏。トランプ氏は最下位なのです。

 ところがルビオ氏が撤退して以後、以下のように変わりました。
 クルーズ上院議員    52ポイント
 ケーシック知事     32ポイント
 トランプ氏       29ポイント

 ルビオ氏を推薦していた指名推薦人はなくなり、そのうちの2人がクルーズ氏に回ったようです。ケーシック、トランプ両氏を支持する推薦人の数はまだ変わっていません。
("The Endorsment Primary," Aaron Bycoffe, FiveThirtyEight, 3/15/2016)

依然として指名に影響力を持つ党エリートたち

なぜ、「指名推薦人」のポイントを獲得することが重要なのでしょうか。

高濱:民主、共和の両党とも、大統領候補を指名するプロセスで上下両院議員や知事が強い影響力を持ってきました。一般党員による予備選や党員集会での投票が党外やメディアでも注目されるようになり、一定の力を持ち始めたのは60年代に入ってからのことです。80年以降、党エリートたちの影響力は弱まりましたが、それでも党エリートたちの指名権限は強く、今回も予備選が始まる前から非公開の会合などで特定の候補を推薦する動きがありました。

 党大会までに指名争いの決着がつかなかった場合、党大会が開かれている最中に、党エリートたちが舞台裏で密談して一人の候補に絞り込むわけです。ここでは一般党員はいかんともすることができません。メディアはこれを「Smoke-filled room machinations」(タバコの煙が立ち込める密室での謀議)などと呼んでいます。
("The Party Decides." Marty Cohen, David Karol, University of Chicago Press, 2008)

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