英国の元ロシア・スパイ殺人未遂事件について、かいつまんで説明すると、こうです。
さる3月4日、英南西部のソールズベリーでロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏(66歳、英国に政治亡命していた)と娘さんのユリアさん(33歳)が何者かに神経剤を使って殺されそうになった未遂事件がありました。
テリーザ・メイ英首相は同月12日、英下院で、ロシアが開発した軍用レベルの神経剤「ノビチョク剤」が使用されたことを明らかにしました。またこの事件に「かなりの確率でロシアがかかわっていた。これはスクリパリ氏への攻撃にとどまるものでなく、英国に対する無差別で無謀な攻撃であり、英国市民が危険にさらされた」と指摘しました。メイ氏は13日、同事件にかかわったとされるロシア人外交官23人を国外に追放しました。英国とロシアの関係は今後、緊張状態が続きそうです。
トランプ大統領はロシアに配慮した?
これに対して、ティラーソン氏は直ちに「ロシアが関与していた可能性が高い」と述べて、メイ氏の見解を全面的に支持しました。
ところがトランプ氏は、「事実関係が判明し次第、英国の見解を支持する。事実ならロシアを強く非難する」とコメント。ティラーソン氏とは異なる見解を示したのですね。英米の情報機関はまさに表裏一体。メイ氏が「ロシアの仕業だ」という前に、両国はその情報をすでに共有していたはずです。それなのになぜトランプ氏は英国支持を躊躇したのか。おそらくロシアの立場を慮ったでしょうね。
13日早朝、トランプ氏はツィッターでティラーソン氏の解任を明らかにしました。ティラーソン氏が大統領から正式に解任を伝えられたのは、それから3時間以上経った昼過ぎだったようです。しかも一本の電話ででした。
ホワイトハウス高官は13日、解任の理由について、①大統領と国務長官がイラン核合意をめぐって意見の食い違いがあったことや、②5月までに行われる見通しの米朝首脳会談、③今後の貿易交渉に新しい態勢でのぞむため、と説明しています。どことなく「後講釈」的な感じがします。
後任のポンペイオ氏は大統領お気に入りの超タカ派
ティラーソン氏の解任と同時に、スティーブ・ゴールドスタイン国務次官(公共外交・広報担当)も解任されましたね。
高濱:国務長官の解任についてホワイトハウスの説明と異なる声明を出したからだとされています。ゴールドスタイン氏は「長官は解任発表前に大統領と会話しておらず、解任理由を知らされていなかった。長官は解任を予期していなかった」と記者団に説明したのです。同氏はティラーソン氏の側近中の側近です。
解任に当たってトランプ氏はティラーソン氏に労いの言葉さえかけなかった。まさに喧嘩別れといった感じですね。
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