信仰心がなくてもトランプを選ぶエバンジェリカルズ

 世論調査機関、ピュー・リサーチ・センターが今年1月に行った世論調査では、共和党員・支持者のうち「トランプ氏は信仰心が篤い」と答えた回答者は44%しかいなかった。ところが、たとえそうであっても「トランプ氏は素晴らしい大統領になる」と答えたエバンジェリカルズは52%もいるのです。トランプ支持はどうやら宗教心を超えて、草の根保守の間に広がっていることがわかります。
("Compared with Carson, Cruz and Rubio, fewer Republicans see Trump as religious person," Pew Research Center, 1/7/2016~1/14/2016)
("Half of evangelical voters think Carson, Trump and Cruz would be good presidents," 1/7/2016~1/14/2016, Pew Resarch Center)

 その理由は何か。前述のロゼル教授は、こう述べています。「ティーパーティー支持者やエバンジェリカルズが共和党大統領候補の口から聞きたがっているキーワード。それは、偉大で強いアメリカの再生と、ピューリタン的価値観の堅持(同性結婚の合法化を改める、人工中絶の禁止、不法移民の禁止、銃規制の撤廃)の二つだ。トランプはこの2つだけを繰り返している。それが高い支持率と、投票結果につながっている」。

民主党でも「エスタブリッシュメントVS草の根」

民主党サイドの結果をどう見るべきでしょうか。

高濱:予備選を箱根駅伝に見立てればよくわかると思います。ニューハンプシャー州予備選は言ってみれば一つの区間です。区間ごとに見れば、それぞれの陣営が勝ったり負けたりします。しかし、最終的な勝利は往復路のトータルで決まります。

 ニューハンプシャー州には伝統的に近隣州から立候補した候補者を支持し、当選させようとする風土があります。サンダース氏はお隣のバーモント州選出の上院議員です。

 また、サンダース氏は終始一貫して民主党リベラル急進派としての立場を貫き通してきました。極めてリベラルな立場をとってきたニューハンプシャー州の民主党員・支持者たちは、その点を評価したのでしょう。サンダース氏はイラク戦争に反対。大企業や大労組からのカネは一切受け取りません。その一方で大学授業料の無償化、若年層の労働状況の改善を打ち出して、若者たちからやんやの喝采を浴びています。

 ニューハンプシャー州の民主党員・支持者たちにとって、かってはリベラル派の騎士的存在だったヒラリー氏も<ファーストレディ、上院議員、大統領候補、国務長官>を経験する中で、そのリベラリズムが色あせてしまったと見えるのかもしれません。「エスタブリッシュメントの一員」とみなしている可能性もあります。

 筆者が電話取材した同州民主党員の一人、アレックス・ストラトフォード氏(元高校教師)はこう述べています。「アメリカ人は世襲政治家を嫌います。共和党でブッシュが伸び悩んでいるのは『ノー・モア・ブッシュ』という声があるから。民主党内にも『ノー・モア・クリントン』の空気があります。ブッシュ王朝もクリントン王朝も嫌だ、というわけです。『サンダースが指名されることはないだろう、せめて予備選段階ではサンダース、サンダースと叫んで、民主党の本来の政治理念を確かめよう』というのが、サンダース旋風の正体かもしれません」。

 ちなみに20日に党員集会が開かれるネバダ州は、人口比で白人76%、黒人9%、ラティーノ28%。28日予備選が行われるサウスカロライナ州は白人68%、黒人28%、ラティーノ5%。白人が90%を超えるアイオワ州やのニューハンプシャー州とは人種構成が大きく異なっています。 ("States & County: QuickFacts," United States Census Bureau)

 特に「民主党員・支持者の非白人はクリントンびいき」(米主要紙政治記者)であるだけにサンダース氏にとっては厳しい戦いになりそうです。

 現に世論調査における支持率を見ると、ネバダ州、サウスカロライナ州ともにクリントン氏がサンダース氏を大きくリードしています。