「どぶ板選挙」が通用しない混成プライマリー

高濱:トランプ氏の勝因の3つ目は、ニューハンプシャー州は予備選、それも「ミックスド・プライマリー」(混成予備選)だったからです。これは、共和党員・支持者だけでなく、「インディペンデント」(無党派)も投票できるシステムです。アイオワ州は党員集会でした。

 このシステムがトランプ氏に有利に働きました。党員集会では、決められた時間に決められた場所で開かれる集会に出席しなければなりません。投票するまで、数時間は拘束されます。従って各陣営は、選挙対策組織を作り、時間をかけて「グラウンド・ゲーム」(地上戦)を展開します。個別訪問して、投票してくれる人を掘り起こすのです。

 ところがトランプ氏の選挙運動は、言うならば「落下傘作戦」です。組織を整備することもなく、大規模な集会を突然やって人を集め、そこでエスタブリッシュメントを激しく糾弾する――いわゆる「Trumpertantrums」(トランプ流癇癪玉)を破裂させる作戦です。大衆を喜ばせてそれを票につなげる戦術でした。ですから、「どぶ板運動」が必要なアイオワ州ではクルーズ氏に破れました。

 米主要シンクタンクのメディア研究者の一人は筆者にこう指摘しています。
 「ニューハンプシャー州の南部はボストン大都市圏に属する東部圏だ。日露戦争終結のポーツマス条約は同州ポーツマスで調印された歴史がある。それくらい国際性が豊かな風土を持つ。州民はワシントン、ニューヨーク、ボストンで流れている情報を時差なくキャッチできる。全米的な出来事に敏感なのだ。トランプ旋風についても熟知している。流行に後れまい、ここはトランプに票を入れようという一般州民が大勢現れても不思議ではない」

 クルーズ氏について言えば、同州で予備選が行われる直前に、「カーソン氏が予備選から撤退する」かのような“誤報”を流したことが高くつきました。それをトランプ氏が激しく批判したことも、クルーズ氏の得票に悪影響を与えたという見方があります。

トランプを南部、西部で迎え討つエスタブリッシュメント

共和党エスタブリッシュメントはトランプ氏がニューハンプシャー州でトップに立ったのを快く思っていないのでしょうね。

高濱:その通りです。ルビオ氏や保守穏健派トリオにもう少し奮闘してほしかったと思っているのは間違いありません。

 共和党はこの後、20日に南部・サウスカロライナ州、23日に西部・ネバダ州でそれぞれ予備選、党員集会を行います。

 サウスカロライナ州の支持率争いではトランプ氏が36%で独走。それをクルーズ氏(20%)とルビオ氏(13%)が追いかけています。保守穏健派トリオではブッシュ氏が9%で、トリオを構成する他の2候補に大きく差をつけています。
("2016 Primary Forecasts: S.C. Republican Primary," FiveThirtyEight, 2/8/2016)

 ネバダ州でもトランプ氏が31%でリード、これをクルーズ氏(19%)が追走しています。
("2016 Primary Forecasts: Nevada Republican Caucauses," FiveThirtyEight, 2/8/2016)

 共和党の選挙対策専門家たちは、保守穏健派トリオが本領を発揮するのはスーパー・チューズデーになると見ています。この日には、テキサス、バージニア、ジョージア、マサチューセッツなど13州で予備選・党員集会が同時に行われます。

 これら13州は、アイオワ州やニューハンプシャー州に比べて人種構成が多様化しており、エバンジェリカルズやティーパーティーの影響力が比較的弱い州が多いからです。