中国には厳しい態度

ところで、2月10日にはワシントンで安倍首相がトランプ大統領と会談します。今や、トランプ大統領の内政外交を陰で操るバノン氏はトランプ大統領にどんな知恵を授けるでしょうか。

高濱:バノン氏は、中国が南シナ海で軍事施設を建設するのに厳しい目を向けてきました。2016年3月にはラジオ番組で、米中が軍事対決する可能性についてこう述べています。「我々は今後5~10年の間に南シナ海で中国と戦争を始めることになるだろう。疑問の余地なしだ。なぜか、中国は南シナ海のど真ん中の岩礁に事実上の『固定空母』を構築し、そこにミサイルを配備している。そして我々に対し『あの海域は大昔から中国の領海だ』と主張している。面と向かってだぞ。我々にも面子がある。面子は我々にとって非常に重要だ」。

 南シナ海における中国の動向については、ティラーソン国務長官も1月11日、上院外交委公聴会で「人工島建設の中止、人工島へのアクセス阻止が米国政府の意向だという明確なシグナルを送るべきだ」と証言しています。

 また東シナ海における中国の動きに関しては、訪日したマティス国防長官が2月3日、安倍首相と稲田朋美防衛相に対し、尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用対象であると明言しています。2月6日にはティラーソン国務長官も岸田文雄外相との電話会談で尖閣諸島について同様の発言をしています。

 トランプ大統領は、「一つの中国」にこだわらないと発言したり、中国を「為替操作国」に認定すると発言したりしてきました。外交・経済の両面で中国に対し厳しく対応する姿勢を打ち出しています。こうした対中認識を持って安倍首相との会談に臨むはずです。

 かって民主、共和両政権で東アジア政策を担当した米政府の元高官は私にこう指摘しました。「10日の日米首脳会談の陰のアジェンダは中国だ。トランプが対中政策について何を言い出すかに注目すべき。就任早々でまだ国務、国防両省のサブキャビネット(次官、次官補クラス)のポストは完全には埋まっていない。このため、新政権は対日戦略をまだまとめ上げていない。だから日本としてはやりづらいはず。予測不可能なトランプが安倍に面と向かって何を言い出すか、誰にもわからない」。

 例えばトランプ大統領が安倍首相に対して、こう切り出したどうなるでしょう。「中国は南シナ海でやりたい放題だ。日米で阻止しなければならない。日本は東南アジア諸国との防衛協力の強化や、海上警備能力の構築支援において役割を拡大すると公約している。『航行自由作戦』(FONOP)*の最中に米中が軍事衝突したら自衛隊の支援を頼む」。

*:米国は「国連海洋法条約」を締結していないが、「他国が公海上で第三国の航行に制限を課す試みを容認しない」ことを示すため、中国のほかインド、イランなど10数か国に対して同作戦を展開している

 米海軍は2015年10月以降、駆逐艦などを南シナ海に出動させて、国際規範の順守を訴える「航行自由作戦」を展開しています。

 マティス国防長官は稲田防衛相に「現時点では軍事的な行動をとる必要は全くない」と述べていますし、稲田防衛相は「自衛隊が『航行自由作戦』ですぐ出て行くことはない」と自衛隊の参加を否定しています。

 安倍首相はトランプ大統領に何と答えるのでしょう。仮定の話とは言え、安倍首相の発言次第で、日中関係は一気に険悪となります。

 マティス国防長官は、日本による在日米軍駐留経費の負担を「他のホストネーションのモデル」と評価し、日本政府はひとまず安堵しています。しかし、「敵は本能寺にあり」。日米首脳会談の陰のアジェンダは「中国」です。