マティスもティラーソンも蚊帳の外

トランプ大統領自身、ホームグローン・テロの危険があることを百も承知で決定に踏み切ったのではないでしょうか。

高濱:今回の決定が準備不足だったことは否めないと思います。外交が絡むにもかかわらず、トランプ大統領は、国務、国防、司法、国土安全保障の各閣僚予定者と一切相談していなかったそうです。

 決定をニュースで知ったレックス・ティラーソン国務長官は、自分が蚊帳の外だったことを知り、ホワイトハウス高官に『唖然とした』と漏らしています。トランプ大統領はホワイトハウスにいる一部の超側近とだけ協議して決めたのです。

("Trumponomics Daily," Tory Newmyer, Fortune, 1/31/2017)

超側近とは誰ですか。以前、高濱さんが指摘していたホワイトハウスの「四天王」ですか。スティーブ・バノン首席戦略官・大統領上級顧問、ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問(トランプ大統領の娘婿)、ケリーアン・コンウェイ大統領顧問、マイケル・フリン国家安全保障担当大統領補佐官の4人ですね。

ユダヤ教徒のクシュナー夫妻は金・土曜は働かず

高濱:「四天王」の全員と相談したのでもなかった、という説もあります。「イスラム教徒入国禁止をできるだけ早く打ち出したほうがいい」と督促し、その草案を書いたのはバノン氏でした。

 クシュナー夫妻は伝統的ユダヤ教徒です。毎週金曜日の日没から土曜日の日没まで飲食はもとより電気もガスも一切使いません。クルマにも乗りませんし、インターネットはおろか携帯電話も使いません。今回の決定がなされた27、28日は、トランプ大統領とは一切接触なしです。ですから同夫妻は一切相談を受けていない可能性があります。

 コンウェイ顧問やフリン補佐官に連絡をとったかもしれませんが、米情報機関関係者の一人は「フリンは会議で発言はするが、バノンのお陰で完全に影が薄くなっている」と漏らしています。


("Can Jared and Ivanka Outrun Donald Trump's Scandal?" Emily Jane Fox, Vanity Fair, 1/30/2017

バノン氏は「ホワイトハウスのラスプーチン」

そのバノン氏が、軍事外交政策の最高決定機関である国家安全保障会議(NSC)の「幹部会議」(Principals Committee)のメンバーに抜擢されましたね。

高濱:トランプ大統領は、大統領令への署名に先立つ1月28日、NSCの組織改正を断行しました。

 同会議の「幹部会議」*のメンバーから統合参謀本部議長と国家情報長官(DNI)を外し、その代わりにバノン氏を加えたのです。バノン氏は国家安全保障問題ではずぶの素人です。おそらくトランプ大統領は自分の腹心を、他のメンバーを牽制するお目付け役として加えたのだと思います。

*:NSC「幹部会議」には正副大統領、国務、国防、司法、国土安全、エネルギー各長官、国連大使、行政管理予算局長、大統領首席補佐官に加え、統合参謀本部議長と国家情報長官が「軍事」と「情報」のアドバイザーとして常時出席してきた。国家安全保障担当大統領補佐官が議事進行役を務める。

("Organization of the National Security Council System," Presidential Policy Directive, The White House, 2/13/2009)

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