トランプ「俺がいなければ閣僚級会談は実現せず」

高濱:それから8日後、トランプ大統領は文在寅大統領と電話会談。

 トランプ大統領は、同日開かれた閣議の冒頭で南北閣僚級会談に触れ、こう述べています。「世界にとっての成功になるよう期待する。今後数週間、数か月に何が起こるか注視する。われわれの(強い)姿勢がなければ、(南北閣僚級)会談は決して実現しなかった」

その一方でトランプ大統領は「金正恩委員長とはおそらく、いい関係にある」と北朝鮮との対話を受け入れる用意があるような発言をしていますね。

高濱:トランプ大統領の朝令暮改的な発言は今に始まったことではありません。この発言については後程、詳しく見てみたいと思います。

 北朝鮮の動きを米国が今どう見ているのか。これまで長年、朝鮮半島問題に関わりを持ってきた国務省元高官は以下のように分析しています。「おそらく金正恩委員長は、対話を開始するタイミングとして去年から『平昌冬季五輪』に的を絞っていたのだろう。五輪にアスリートを参加させることで北朝鮮の『ヒューマン・フェイス』(まともな人面)を世界中にみせ、ミサイルと核で近隣諸国を脅す『ならず者国家』とのイメージを払拭したいにちがいない。返す刀で朝鮮民族主義を鼓舞することで南北統一を韓国民に訴える筋書きだ。それにはオリンピックは最適の場だ」

 「五輪休戦中に、これまで行ってきたミサイル・核実験の結果を総点検し、次に備えるつもりだろう。今は厳寒の候でミサイル発射実験もままならない。未確認情報だが、2017年9月3日に核実験を行なった際に地下施設が損害を受け、科学者数人が犠牲になったともいわれている」

 「外交的には、ミサイル・核実験を一時中止することで、これまで北朝鮮を説得し続けてきた中国の顔を立てることができる。また、これまで終始一貫して宥和政策をとってきた文在寅大統領の『本気度』を試すこともできるだろう。文在寅大統領が、対北朝鮮経済制裁措置や軍事的圧力を弱めさせるよう米国に真剣に働きかけられるかどうか、その判断材料になりうる」

米国は「朝鮮民族ナショナリスト・文在寅」に懐疑的

米国は文在寅・韓国大統領の宥和政策をどう見ているのですか

高濱:リベラル派の中には、文在寅大統領が進める対北朝鮮路線に理解を示す者もいます。しかし、この路線では北朝鮮にミサイル・核を放棄させるのは難しいとみる米専門家が大半です。一部には、文在寅大統領に懐疑的な専門家もいます。
"North Korea Is Walking Back War--And Pundits Are Strangely Disappointed," John Feffer, Foreign Policy in Focus, 1/10/2018)

 その理由として、中国の顔色を窺って高高度防衛ミサイル(THAAD配備)を延期したり、平昌冬季五輪が終わるまで米韓合同軍事演習を延期することを提案したりしている文在寅大統領の政治スタンスが挙げられます。合同演習の中止は中国とロシアがこれまでずっと主張してきたアジェンダでもあります。

 ウラジミール・プーチン ロシア大統領が金正恩委員長を「成熟した政治家」と称賛し、一連の動きについて「北朝鮮が勝った」と言っているのもそのためでしょう。つまり、これまで米国が頑強に突っぱねてきた合同演習の中止を、一時的であるにせよ実現させたのですから。プーチン氏にとっては、「金正恩よ、でかした」ということになるんじゃないですか。

 米韓首脳は、直接会っても電話で話し合っても、そのあとの記者発表はどこかしっくりしていません。例えば、10日に行った電話会談の後も、韓国側は「トランプ氏は南北対話が行われている間、いかなる軍事的行動もしないと述べた」と発表していますが、米側はその点について一切言及しませんでした。

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