満足度の低さというのは、どういう点に原因があったのでしょうか。

武富:「労働環境が厳しい」「お客様に保険を説明する難易度が高い」「もっとやりたいことがあるのにできない」などいろいろありました。私は12、3年前に人事課長を務めた後、保険契約を引き受ける400人規模の組織の長になったのですが、そこでも満足度調査の結果は低いものでした。「事務は正確にやって当たり前で、間違えられると怒られる。それではモチベーションが上がらない」と。コンタクトセンターなども、お客様から厳しい言葉も言われるし、商品の難しい手続きや約款について説明しなくてはいけない難易度の高い仕事です。それをモチベーションがなかなか上がらない中でやらなくてはいけないというのが、調査の結果に表れていたのかなと思います。

総合職と一般職を統合。「場」と「訓練」で人は変わる

どうやって課題解決に取り組んだのでしょうか。

武富:大きな節目として、2009年に総合職と一般職を統合しました。違いは住居異動の有無だけで、やってもらう仕事は一緒という形にしたんです。自分の力を出すために違う世界も見てもらおうと、ジョブローテーションや社外との研修、ネットワークづくりといったことに、元一般職の女性を参画させてきました。まだ道半ばですが、意識の改革という面ではだいぶ変わってきたかなと思います。

 最近、私が人事部門のメンバーに言っているのは、「きれい事ばかりで実態が伴わないとかえって不満が大きくなる。だから一番変わらなければいけないのは人事だよ」ということです。制度を変えたから実現するわけではなくて、どうやって実態に近づけ、会社として行動を起こしていくか。「会社が変わったな」ということを、男性も女性も、外国籍の方も障害のある方も、みんなが思えるようにしていかなくてはいけないと思っています。

元一般職の方に、どのように意識づけをされたのかを伺いたいです。多くの企業が職掌統合をやりましたが、もともと一般職で入社しているために意識がついていかず、不平が出たり、かえってモチベーションが下がったりということも起きています。

武富:それまでの事務中心の定型的な仕事から、営業のコンサルティングや支払いの判断といった専門的な業務、数十人を束ねるマネジメントなど、いろんな仕事にどんどん就かせると、本音が多々出てきました。「自分は自信がないし、○○さんみたいにできない」と言うのです。あとは、「私たちがやる前に、総合職の人がもっとやるべきでしょう!」。これが一番強烈です。

 当然ながら、人は高いハードルを課していかないと成長しません。本当は一人ひとりに強みと個性があるわけですが、それまではずっと一つの仕事をやってきたので、気づかせることができなかった。私は「難しい仕事、あなたにとってチャレンジングな仕事をやってもらうけれど、それはあなたの強みを発見するための策なんだよ」ということを伝え、人事部と所属長、本人とでいろいろ議論して、どういうキャリアが望ましいのかを見てきました。その結果、さまざまな仕事を経験することで自分の強みを知り、それがモチベーションとなって本人にもプラスに働くというケースが増えてきました。

 私がよく言うのは、「ポストが人をつくる」いうことです。「場」と「訓練」を経験することで、人は変わってくると思っています。

第一生命保険では女性管理職比率を2018年4月までに25%にするという目標を立てていますが、こちらの進捗はいかがですか。

武富:非常に厳しい目標ではありますが、2017年4月時点で24.2%まで来ましたので、何とか達成したいと思っています。

女性のメンタリングが役員の固定観念を崩す

女性の登用に関して、役員の方々が関与するようなしくみをつくったと伺いました。

武富:別の部門を経て久しぶりに役員として人事に戻ったときに一番のボトルネックだと感じたのが、女性たちの意識は変わり始めているのに、組織のトップが変わっていないということでした。

 たとえばある女性をこういうキャリアで育てたいから抜擢しましょうと言っても、「まだまだこのポストは無理、それよりもこっちの男性のほうがいいよ」と答えるんです。要するにどうしても課題やマイナス面から入ってしまう。実績を出すには気心の知れた男性がいい、女性には無理をさせられない、という古い発想です。

 一番大事なのは「できるように育てること」であって、それこそが上の仕事。当時社長だった渡邉と、まずは役員の意識を変えていこうと決めました。

 その一つとして、女性の幹部候補のメンタリングを役員に担当してもらいました。最初は私が試しにということで、ライン長を目指す女性2人を担当し、1年の間に5回ほど個別に面談しました。実際にやってみて、「ああ、これは役員にとっても勉強になるな」とピンときました。1年かけて女性のメンタリングをするとなると、相当準備して臨まなくてはいけません。女性にとっても経営の話をじかに聞ける貴重な機会になります。翌年から毎年5~10人程度、若手役員を中心にやってもらっています。