女性比率50%は必然の数字。ただし優遇はせず成果で判断する

この7月には、その「『トマトの会社』から『野菜の会社』に」とともに、「女性比率を50%に~社員から役員まで」という長期ビジョンを打ち出しました。役員を含む全階層で50%という目標はインパクトのある数字だと思うのですが、その背景を教えてください。

寺田:理由は主に2つです。まずは、世の中の男女比に照らし合わせると50%が妥当であること。もうひとつは、私たちの商品を実際に購入するのは圧倒的多数が女性であり、食品メーカーで一番数が多い21万人超の個人株主、当社ではファン株主と言っていますが、それも女性が54%を占めます(15年12月末時点)。さらに新卒総合職の応募者数が、男性290倍に対し、女性が590倍。つまり、カゴメは女性から圧倒的な支持を頂いている会社だということが裏付けられており、購買者の視点に立った事業活動を目指すには50%が必然だと考えました。

消費者、投資家等のステークホルダーの構成比を考えれば、必然的な数字だったというわけですね。チャレンジングな決断に逡巡はなかったですか。

寺田:ありませんね。20年後には、役員始め、社内の半数が女性で、社長も女性になっているかもしれない。その会社がどんなことをするのか、想像できないところが面白いと思うんです。女性が役員まで各職位において半数を占め第一線で活躍する食品企業は、まだ日本にはないですから、ぜひ第一号になりたいですね。
 まずは中期経営計画として、この3年で女性管理職比率8%、長期ビジョンとして、すべての階層で女性を50%にもっていく。計算すると最短で20年位かかるため、20~25年のレンジで考えています。2036年に女性比率50%の目標を達成するために今から着手しないと間に合わないと考えています。来年度の新卒採用からは、これまで30%台後半だった女性比率を50%に引き上げる予定です。

しかし、女性の採用比率を高めると離職リスクの問題も生じるため、多くの企業がそこまで高い数値目標を設定できずにいます。

寺田:50%の数値目標をビジョンとして掲げることで、逆に女性を辞めさせないためにはどうしたらいいかを皆が考えるようになるはずです。これまで、結婚・出産や配偶者の転勤などの理由から退職してしまうケースが圧倒的に多かったため、母数が増えず、女性登用が進みませんでしたが、制度の充実や出産しても働き続けるという価値観に変わってきたこともあり、工場の技術系を除き、管理職の女性比率30%くらいまでは難しい数字だとは思っていません。
 また、「50%」という目標により、女性のモチベーションが相当高くなることは明らか。そして男性側にも刺激になる。より成果にコミットして働く社員が増えると考えています。 「全職位で女性比率を50%にする」というと、女性ばかりが優遇されるのかと誤解を生むかもしれませんが、決してそうではありません。あくまでも成果で判断するのが大原則。カゴメのダイバーシティ推進は、勝ち残るため、企業の価値向上のための経営戦略であり、女性登用のためだけにやっていることではないということです。

7月に開催した社内のダイバーシティ推進イベントで社員に直接メッセージをおくる。

女性優遇ではなく、均等処遇にしてあくまでも成果でみる。20年後までの道のりにおいて、何かマイルストーンを設定していますか。

執行役員の曽根智子氏がダイバーシティ推進室長に就任

寺田:絵に描いた餅にならないよう、ダイバーシティ推進室と一緒にこれから作り上げていきます。一方、私が委員長を務めるダイバーシティ委員会では、従業員皆が「意欲高く能力発揮し続ける働き方」を考えていきますが、職位や性別を問わず、幅広いメンバーが各事業所から集まり、毎年入れ替わっていくので、現場の意識改革もおのずと進むはずです。他にも、役員向けに毎月社外の専門家や企業トップによる講演など、ダイバーシティ先行企業の事例を学ぶ機会を、執行役員の曽根智子ダイバーシティ推進室長が中心となって取り入れています。