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市場の「緩和策修正願望」は実現するのか?(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 昨年12月13日に開催されたECB(欧州中央銀行)理事会は、市場のコンセンサス通り、年内で量的緩和を終え、年明けから再投資政策によりバランスシート規模を維持していくことを決定。政策金利のフォワードガイダンス(将来の金融政策運営に関するコミットメント)は「少なくとも19年夏まで据え置き」が維持された。

 そうした中で1つ注目されたのは、ユーロ圏の景気減速がかなり明確になっており、物価の上昇力も弱い中で、ECBがリスクバランスをどうするかという点だった。結果は、景気・物価見通しの数字は一部下方修正しつつも、リスクバランスは「おおむね均衡している」のまま据え置き。ただし、ドラギ総裁が声明文でいくつかの要因を挙げつつ「リスクバランスはダウンサイドに向かって動いている」と表明するという、妥協色の強いものだった。

 理事会終了後、そこで行われた議論の内容をロイター通信が報じた。経済見通しに対するリスクが「下振れ方向に傾いている」といった一段踏み込んだ見方を示すよう、一部の理事会メンバーが求めたという。だが、緩和策実施の用意があることを示すためにECBがこの表現を過去に使ったことがあるため、市場で緩和期待が浮上してしまうという反対意見が出された。一方で、成長鈍化は認める必要があり、メッセージを変えなければECBの信頼性に疑念を生じさせることになると指摘する向きもあったという。

 ユーロ圏の景気減速が今後さらにきつくなる、あるいは物価上昇の鈍さが一段と明確になる場合、ECBはリスクバランスの表現の下方修正に追い込まれるだろう。そうした場合、利上げ開始時期の織り込みが大きく後ずれすることは避けられないだろう。

 ここで、FRB(米連邦準備理事会)、ECBおよび日銀が、景気・物価見通しに対するリスクのバランスをそれぞれどのようにみているかを比べてみたい。

FRB
「経済見通しに対するリスクはおおむねバランスしている(roughly balanced)とFOMCは判断している。しかし、グローバルな経済・金融の展開を引き続き注視し、経済見通しに対する意味合いを評価するつもりだ」(12月19日 FOMC(連邦公開市場委員会)終了後の声明文)
ECB
「ユーロ圏の成長見通しを取り巻くリスクは依然、おおむねバランスしていると評価できる。だが、地政学的要因・保護主義の脅威・新興市場の脆弱性・金融市場のボラティリティーに関連している根強い不透明感によって、リスクバランスはダウンサイドに向かって動いている」(12月13日 理事会終了後のドラギ総裁声明文)
日銀
「次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に下振れリスクの方が大きい」(10月31日 「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」)

先行きの利下げを織り込みに行くか

 昨年12月18、19日に開催されたFOMCでは、大方の予想通り0.25%ポイント幅の追加利上げが決まった(表決は全員一致)。FF(フェデラルファンド)レートの新たな誘導水準は2.25~2.5%。なお、準備預金への付利金利の引き上げ幅は、FFレートを誘導レンジ内に収めようとするテクニカルな観点から0.20%ポイントにとどめられ、2.40%になった。

 声明文の第1段落にある経済状況認識は11月時点からほとんど変わらなかった。