
もうすぐ終わる2018年は「トランプ米大統領に金融市場が振り回された年」になったという印象を、筆者は抱いている。トランプ氏の発言が市場に及ぼした影響は場面ごとに大きかったり小さかったりしたが、彼の動きは常に市場関係者の注視対象になっていた。 今年1月~12月について要人発言を1つずつ選び出し、振り返ってみた。
【1月】
トランプ米大統領「われわれは2万5000(ドル)という非常に大きなバリアーを突破した」「私の推測では新しい数字(次の節目)は3万(ドル)だ」(1月4日 ホワイトハウスで記者団に)
~ ニューヨークダウ工業株30種平均(NYダウ)2万5000ドル突破について、上記のように大統領は述べた。NYダウ3万ドル到達なら、2万5000ドルからさらに20%も値上がりする必要があるわけだが、そうなるまでの時間軸は示されなかった。なお、NYダウが18年にザラ場高値をつけたのは10月3日(2万6951.81ドル)。その後12月にかけては何度も急落するなど、米国株の値動きはハイテク株を中心に不安定化。NYダウは12月13日には高値から10%超の下落となり、調整局面入りした。
【2月】
黒田日銀総裁「現時点で、例えば10年物国債の操作目標を若干であれ引き上げることは適切ではない」(2月6日 衆議院予算委員会)
~ 内外で株価が大幅に下落し為替が円高に動いている場面であればなおさら、日銀は長期金利を上昇させようとしているのではといった市場の一部の思惑を強く打ち消しておく必要が、日銀にはある。「若干であれ」と付け加えることで、総裁はそれまでよりも強く、市場の一部に出ていた長期金利ターゲット引き上げ観測を否定してみせた。
一年通じて続いた米政府人事のごたごた
【3月】
ティラーソン米国務長官(当時)「(新長官体制への)整然とした円滑な移行が重要だ」(3月13日 国務省で記者会見)
~ トランプ大統領から突然更迭されたティラーソン氏は上記のように述べたものの、トランプ氏に対する感謝の言葉はなく、突然の解任への無念さをにじませたと報じられた。この政権では年を通じて、人事のごたごたが継続。12月8日にはケリー大統領首席補佐官が年末で辞任することが明らかになったが、後任の人選は難航し、行政管理予算局(OMB)のマルバニー局長が首席補佐官代行に就くことが14日に決まった。
【4月】
トランプ米大統領「とても良い議論を行っている。これまで見る限り、金正恩は非常に率直で、とても立派な(very honorable)人物だ」(4月24日 ホワイトハウスで記者団に)
~ 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長のことを、トランプ大統領は「ちびロケットマン」「病気の子犬」と揶揄(やゆ)していたこともあるのだが、初の米朝首脳会談開催に向けて交渉が進む中、態度を一変させた。6月5日には「(米朝首脳会談は)何か大きなことの始まりになると期待している。間もなく分かるだろう!」とツイート。同月12日にシンガポール・セントーサ島で歴史的な首脳会談が開催された際には、トランプ大統領は冒頭で、「とてもいい気分だ。われわれはすばらしい話し合いをすることになる。会談は成功するだろう。光栄なことだ。われわれはすばらしい関係を築くことになる。間違いないだろう」と、記者団を前に語った。だが、北朝鮮の非核化に向けた具体的なプロセスは、やはり難航。2度目の米朝首脳会談は、まだ開かれていない。
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