
アメリカの国債市場では12月3日、米10年債利回りが前週末に続いて節目である3%よりも低い水準で取引されたが、それ以上に重要な出来事が3つあった。
①米30年債利回りが一時3.25%まで低下したこと(翌4日の東京市場の取引時間帯には3.2%台前半まで低下し、その後3.1%台前半に)
~ 米30年債の3.25%近辺は、9月頃までは米年金マネーによる押し目買い注文が厚いため、金利上昇方向のかなりしっかりした「天井」とみられていた。ところが、10月になってこの水準を上抜けたことにより、米国債の長期・超長期ゾーンの利回りが全般的に上方シフトしたという経緯がある。再び3.25%が「天井」になれば、10~11月に上昇する前の状況に回帰するわけで、米国(ひいてはそれに連動してきた日本)の長期・超長期ゾーンで金利低下の余地が拡大する。
中期ゾーンで部分的な逆イールドが発生
②2年債と5年債の「利回り逆転」が起こった(米国債イールドカーブの中期ゾーンで部分的に「逆イールド」が発生した)こと
~ 前者が2.82%、後者が2.81%というごくわずかな差だが、11年ぶりの現象である。3年債と5年債でも同じことが起こり、その後も逆転状態が継続している。FRB(米連邦準備理事会)の利上げ路線に対して債券市場が警告し始めたと言える。一般には、後述する2年債と10年債、あるいは3カ月物財務省証券(T-Bill)と10年債の「逆イールド」が、債券市場による先行きの景気後退(リセッション)到来「警告シグナル」とされている。
中短期ゾーンの金利が利上げを反映し、先行きも利上げが継続されるとの見通しを織り込んで上昇する一方で、長期・超長期ゾーンの金利は利上げのし過ぎによる景気のオーバーキル(意図した以上の悪化)や、それに伴う物価の押し下げを織り込む形でほとんど上がらないか、あるいは低下する。
それらにより「逆イールド」が形成されるわけである。00年のITバブル崩壊後も、06年の住宅バブル崩壊後も、「警告シグナル」は正しく発信された<図1>。なお、世の中には誤解している人もいるため付言しておくと、「逆イールドが発生するとその効果によって景気後退になる」というような因果関係があるわけではない。景気後退の確率が上昇したことを、さまざまなデータを織り込んで相場形成がなされる中で、債券市場が警告する、ということである。

③より市場がウォッチしている2年債と10年債の利回り格差が15ベーシスポイント、すなわち0.15%まで縮小したこと(07年7月以来の小さな幅。その後10ベーシスポイントを下回る場面も見られており、このベースでの「逆イールド」は時間の問題か)
同じ12月3日には、「入手される指標を考慮すると同時に、方向性が著しく変化すれば対応するという戦略に沿っていく」というクオールズFRB副議長(金融規制担当)の発言が報じられた(ロイター)。
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