政府が組合側について4年連続のベアを求める

 2017年春闘の構図をわかりやすく言えば、政府が組合側のバックについて4年連続のベアを求めており、経営側が守勢に回っている「官製春闘」である。

 安倍首相は11月16日に開催された働き方改革実現会議の第3回会合で、2017年春闘では「少なくとも今年並みの水準の賃上げを期待し、特にベアは4年連続の実施を願いたい」と発言。榊原定征日本経団連会長ら財界トップに対し、今年以上の賃上げを要請しつつ、ベアへのこだわりを見せた。また、予想される将来の物価上昇率を踏まえた賃上げの議論なども、首相は求めた。

 さらに、日銀の黒田東彦総裁は11月14日に名古屋で行った講演で、日銀が掲げる2%の物価目標を前提にした賃金の決定を経営側に求めた。

安倍首相の影響力の大きさはあなどれない

 これに対し榊原経団連会長は11月22日の記者会見で、予想物価上昇率を踏まえた賃上げの議論という安倍首相からの要請について、「そういった要請があることは企業側に伝える必要はある」「何らかの形でメンション(言及)しなければならないとは思っている」としながらも、「それをベースにディフィニティブ(決定的)な形で求めるかどうかは今後の議論」「(企業の多くが)賃金決定交渉で使うのは実績値」だと、慎重姿勢を示した。

 実際にそうなるかどうか、仮にそうなった場合でも長期間持続するかどうかわからない数字をもとにして固定費的な色彩が濃いベアを含む賃上げを議論するというのは非合理的な話だというのが、筆者の見方である。

 過去3年(2014~2016年)の主要企業の春闘賃上げ率(定期昇給+ベア)は、政府から経営側に対して賃上げ要請が繰り返し行われる「官製春闘」の中、経営側が当初渋っていたベアがつく形で決着した。2014年や2015年の春闘では、序盤に「ベアは問題外」と経営トップが語っていた会社でもベアがつけられたのが印象的だった。高い支持率を維持しており、自民党の内外にライバルと言えるような存在が見当たらない安倍首相の影響力の大きさはあなどれない。

 主要企業春闘賃上げ率として報じられる集計結果で主なものは4つあるが、それらのうちでは厚生労働省の公式統計を、筆者は最も重視している<■図1、■図2>。

■図1:主要企業の春闘賃上げ率
(出所)厚生労働省
■図2:春闘賃上げ率 各種調査の計数比較
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
連合 1.71%
(4,924円)
1.72%
(4,902円)
1.71%
(4,866円)
2.07%
(5,928円)
2.20%
(6,354円)
2.00%
(5,779円)
日経新聞 1.67%
(5,160円)
1.66%
(5,154円)
1.65%
(5,074円)
2.09%
(6,298円)
2.37%
(7,219円)
2.08%
(6,488円)
日本経団連 1.85%
(5,842円)
1.81%
(5,752円)
1.83%
(5,830円)
2.28%
(7,370円)
2.52%
(8,235円)
2.27%
(7,497円)
厚生労働省 1.83%
(5,555円)
1.78%
(5,400円)
1.80%
(5,478円)
2.19%
(6,711円)
2.38%
(7,367円)
2.14%
(6,639円)
注: 連合の上記の調査結果は組合員数300人未満の企業を含んでいる。日経新聞の調査対象は、上場企業と独自に選んだ有力な非上場企業。日本経団連の調査対象は、東証1部上場・従業員500人以上が原則の大手企業。厚生労働省の「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」の調査対象は、原則として資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合がある企業
(出所)厚生労働省、日本経団連、連合、日本経済新聞