習近平主席の特使に、成果が得られた様子はなし

 北朝鮮の韓大成駐ジュネーブ国際機関代表部大使は11月17日のインタビューで、米韓合同軍事演習が続く限り米国と交渉するつもりはないと明言した(ロイター)。習近平中国国家主席は同日、平壌に特使を派遣したが、成果が得られた様子はなかった。

 そうした状況の中で起こったのが、11月29日の「火星15」発射だった。2カ月半近く中断していた北朝鮮と米国をプレーヤーとする「チキンゲーム」が再開することになってしまった印象である。

 11月29日未明、北朝鮮が弾道ミサイルを発射。そしてこの日昼過ぎ、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」だという発表が北朝鮮であった。到達高度は4000kmを大きく超えて過去最高。約960km飛んで、青森県西方約250kmの排他的経済水域(EEZ)に落下した。

外交交渉のめどが立たずに挑発行動を再開か

 すでに述べたように、ユン特別代表は、核やミサイルの実験を60日間停止すれば米国が直接対話に応じる考えを、北朝鮮に示したようである。米国の姿勢(解釈)は、核・ミサイル実験を停止すると北朝鮮が米国側に通告してから日数カウントが始まるというものだった。そのあたりの意志疎通がうまくいっていなかった可能性もある。北朝鮮は(理由は不明確だが)そうした通告をしないまま、挑発行動を自制。60日経っても米国の強硬姿勢に変わりがなく外交交渉入りのめどがいっこうに立たないので、挑発行動を再開したとも考えられる。

 また、米トランプ政権が11月20日に北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定したことが、北朝鮮の背中を押した感も漂う。再指定に対し北朝鮮は、これを「重大な挑発」として非難しつつ、「米国の敵対政策が続く限り、われわれの抑止力はさらに強化される」と宣言していた。

 感謝祭を過ぎて、米国はいまクリスマスシーズンである。この時期にトランプ大統領がお祭り気分をぶち壊しにするような軍事行動には出ないだろうという読みも、北朝鮮による挑発行動の背後にはあっただろうと、筆者はみている。

グアム沖や米国西海岸近くへのミサイル発射は自制

 また、米国の領土に直接の脅威が及んだことを米国の人々に強く印象付けるほどの挑発行動、具体的にはグアム沖や米国西海岸近くに向けた弾道ミサイルの発射を、北朝鮮は自制している(今回もロフテッド軌道でミサイルを発射した)。

 したがって、北朝鮮によるミサイル発射の報告を受けた直後のトランプ大統領の反応は比較的穏当なものであり、記者団から北朝鮮への対応に変化はあるかと問われると、「変わらない。われわれは真剣に取り組んでいる」と断言した。その後の安倍首相との電話会談では、北朝鮮に強い圧力を加え続けることで意見が一致。菅官房長官によると、軍事オプションに関する発言はなかった。

軍事行動にはまだつながらないと見るのがコンセンサス

 米国は「朝鮮半島非核化」という理想論を掲げたままであり、核保有容認が交渉の前提条件だとしている北朝鮮とは、根本部分でかみ合っていない。北朝鮮がミサイルを11月29日に発射したことで、年内の外交交渉入りは絶望的な状況である。

 それでも、今回のミサイル発射が軍事行動につながることはないという見方が市場のコンセンサスであり、筆者も同じ意見である。12月5日には国連のフェルトマン事務次長(政治局長)が訪朝した。軍事衝突回避のための調停役として、対話の場をつくる努力をしていくとみられる。

 ちょっと気になるのは、トランプ大統領の知能レベルが「幼稚園児並み」だとマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)が批判し、安全保障について理解する能力がないと不満を述べていると、米ニュースサイト「バズフィード」が11月20日に報じたことである。先生(専門家)たちの言うことをきく素直な「幼稚園児」のままでいて、「まさか」の行動をとったりしなければよいのだが…。