中国に対し、以前よりは気を使うようになった?

 金正恩朝鮮労働党委員長の姿勢が変わったと筆者が確信したのは、10月10日(朝鮮労働党創建記念日)に加え、18日に中国共産党大会が開幕した前後にも、弾道ミサイル発射やさらなる核実験といった挑発行動が何もとられなかった時である。米国主導の経済制裁への協力により、中国と北朝鮮の関係は悪化した。9月3日には、中国・アモイでBRICS首脳会議が開会する約4時間前に北朝鮮は核実験を行って、習近平・中国国家主席の顔に泥を塗った。同様の行動は昨年9月や今年5月にもあった。

 ところが、10月の中国共産党大会開幕に際して北朝鮮がとった行動は、祝電の送付だった。さらに、中国が11月1日に送った答礼の返信を、朝鮮労働党の機関紙である労働新聞は翌2日、1面トップで掲載(11月3日 産経)。米国との間で仲介役となってくれる可能性がある中国に対し、北朝鮮が気を使うようになってきた様子がうかがえる。

「偶発的衝突」は避けたい北朝鮮

 また、ソウルの軍事関係筋によると、北朝鮮軍兵士は最近、38度線の南北軍事境界線上にある板門店の共同警備区域(JSA)での挑発行為を控えており、偶発的な衝突を避けたい思惑が北朝鮮側にあるとみられている(11月5日 朝日)。11月13日に板門店で北朝鮮の軍人が韓国に亡命を図り、北朝鮮の兵士が境界線を一時的に越えつつ銃撃を加えた後も、事態がエスカレートすることはなかった。

 11月6日に行った日米首脳会談でトランプ米大統領と安倍首相は、北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めることで意見が一致した。現在の国家体制を維持する上で核兵器は「命綱」であり決して手放すことができないという北朝鮮のかたくなな姿勢を、強力な経済制裁をテコにして可能な限り軟化させたいというのが、日米の思惑だろう。

 だが、朝鮮中央通信は11月4日、「国家核戦力完成の終着点に達した」「(北)朝鮮は対話に反対しない」としながらも、「米国は我々との非核化協議を夢にも見てはならない」と伝え、米朝協議の前提は北朝鮮の核保有が認められることだという立場を堅持した(11月5日 日経)。米国が北朝鮮との間で直接交渉を正式に始める見通しは立っていない。

ゴールに据えているのは、在韓米軍の撤退か

 では、核兵器の保有を交渉の過程で容認されるかどうかはとりあえず置いておくとして、北朝鮮は何を米朝協議のゴールに据えているのだろうか。どうやらそれは、在韓米軍撤退のようである。