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 この記事によると、日銀が7月末の金融政策決定会合で緩和策の修正を決めた翌日である8月1日以降11月21日までの26回のETF買い入れ(設備・人材投資企業対象以外)で、前場のTOPIX下落率が最も小さかったのは10月29日の0.27%。下落率が0.19%だった11月15日は買い入れがなかったので、市場では「約0.3%安」が日銀ETF買い入れのトリガー水準とみられていた。それが22日に覆ったわけである。

 10月の株安対応の大規模な買い入れで「日銀の(ETF)買い余力は乏しくなっている」との声も市場にはあったもようで(筆者に言わせればそうした見方はナンセンス)、さまざまな思惑が出ており、中には「将来の(ETF買い入れ)枠拡大への地ならしでは」「12月の日銀会合に向けて思惑が広がるのではないか」といった見方も出ていたという。

 だが、筆者は「日銀のETF買い入れ余力が尽きかけている」「将来の買い入れ枠拡大に向けた布石ではないか」といった見方には、完全に否定的である。上記ですでに説明した、日銀がETF買い入れを柔軟化した意味合いを、いまだに理解できていない向きがあるのではないか。

 「今年の日銀ETF買い入れ可能額は残り少ない」といった記事を一部業界紙が掲載するような現状に、日銀は一種のいらだちを覚えたのかもしれない。11月22日のETF買い入れは、①TOPIX前場下落率といった基準に沿って固定的・硬直的に運営されているという見方の払しょくを狙ったものであると同時に、②本来の趣旨である「リスクプレミアムへの働きかけ」という観点から市場の脆弱な地合いがこの先当面続くと判断したものだろう(19年にかけての数多いリスク要因については後述)。さらに言えば、22日の買い入れ実施がサプライズになることが株価下支えに寄与してくれればもうけもの、ということだろう。

 「米国の中間選挙が11月に終わった後、12月から2019年1~3月期にかけてはリスクイベントが少ない」といった説明をしているアナリストがいるそうだが、筆者に言わせれば、現実は全く逆である。

 すぐに思いつくものだけでも、①12月11日の英議会におけるEU(欧州連合)離脱合意案採決、②ECB(欧州中央銀行)による12月末の量的緩和終了(日米欧中央銀行のバランスシート拡大停止・縮小は「カネ余り」相場の一層の不安定化につながり得る)、③1月招集米新議会での下院民主党によるトランプ政権追及強化(弾劾訴追も選択肢となる)、といった材料がある。一時休戦となっている米中貿易戦争の行方、中国の景気悪化度合いも要注目材料である。

 12月および19年1・3月に予定される米FOMC(連邦公開市場委員会)のいずれかで利上げの休止がアナウンスされれば、株式などリスクが相対的に高い資産の価格下支えに寄与するだろう。

金融市場に盛りだくさんの「リスクオフ」要因

 ただしそれは、米景気指標の出方(景気減速度合いと市場のリスク認識の高まり具合)次第の面がある。景気指標悪化がきつい場合にリセッション懸念から株価の下げ幅が大きくなり、FRBに対する利下げ催促相場の様相を帯びるシナリオも想定できる。

 金融市場の「リスクオフ」への傾斜につながり得る要因がこの先いかに多いかをわかりやすく示す手法はないかと考えていたところ、ABC順に並べることを思いついた。

  1. (America First)~トランプ政権の保護主義。米中両国の覇権争いが絡んでいる
  2. (Brexit)~EU離脱合意を英下院が否決する場合、先行き不透明感が一層強まる
  3. (China)~金融緩和があまり効かず、財政頼み。19年は成長目標を切り下げも
  4. (Developing Economies)~通貨防衛のため南ア、インドネシアなど利上げ実施
  5. (EU)~欧州委はイタリアに対する過剰財政赤字是正手続きを勧告、制裁も視野

上記5つに続くものとして以下の2つもあるが、材料としてはかなり小粒である。

  • F.(France)~燃料課税上げに反発するデモ・支持率低下にマクロン大統領が直面
  • G.(Germany)~州議会選で敗北したメルケル首相が与党党首の座を明け渡す

 ついでと言っては何だが、最後に、債券市場や株式市場が人工的な色彩をかなり帯びている日本についてABC順に重要なワードを並べた上で、若干の解説を付しておきたい。

  1. (Abe)~自民党総裁選に勝利した安倍首相の党総裁任期は21年9月まである
  2. (Bank of Japan)~物価目標2%は高すぎ、異次元緩和は事実上「エンドレス」
  3. (Consumption Tax)~19年10月予定の消費増税対策は迷走気味。再々延期も
  4. (DPJ)~政権交代後の民主党の失政で弱小野党が乱立。19年7月ダブル選挙も
  5. (Expansion)~19年1月まで持続すれば、景気拡張局面は戦後最長記録となる