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 同日に発表されたドイツの7-9月期実質GDPは前期比▲0.2%で、15年1-3月期以来のマイナス成長。これには同国の自動車業界による排ガス・燃費検査強化への対応が出遅れて生産が落ち込んだという特殊要因が影響しているのだが、製造業PMI(購買担当者指数)の持続的な弱さなども考え合わせると、世界経済減速が影響した面も少なからずあると考えられる。

 そのような中で、国内の債券市場における長期・超長期ゾーンの国債利回りの低下が、このところ目立っている。日銀がコントロール対象にしている10年債は11月19日に0.090%まで低下(8月23日以来の水準)。翌20日には投資家の買い需要が集まりやすい20年債が一時0.605%になったほか、40年債が節目の1%を下回り0.995%をつける場面があった。その後も金利低下が断続的に見られている。

 こうした動きの背景には、①3月決算期末が徐々に意識される(時間がなくなってくる)中で円の余剰資金が消去法で超長期債に向かいやすくなっていること、②そうした動きを後押しする大きな状況変化として米国株安・米国債利回り低下・円高・ドル安が徐々に進んでいること、③日銀の言う「経済・物価情勢等」にあてはまると考えられる米国市場の動きに沿った自然な(債券市場に本来備わっているべき市場機能に沿った)金利低下を日銀金融市場局が強くけん制してくるとは考えにくいこと、以上3点があると、筆者は整理している。

 上記①の関連で、いわば「見切り発車」的に超長期債など国内債への買いが強まるのではないかと筆者が考えた大きなきっかけは、日経QUICKニュースが11月15日の夕刻に配信した記事「東証REIT(不動産投資信託)指数が年初来高値、ETF(上場投資信託)型に地銀マネー大量流入」である。

 東証REIT指数はこの日、1794.77に上昇して年初来高値を約5か月ぶりに更新したのだが、その背後には地方銀行の買いがあるというのである。以前であれば、上記指数の1800近辺は地銀勢の利益確定売りが出やすい水準とみなされていた。そのあたりの水準でも地銀勢から買いが入ったということは、円ベースで相対的に高い利回りを得ることができる金融商品への需要の強まりを示唆している。

 米国市場での株安・米国債利回り低下(上記②)について、筆者は現時点ではまだ、万全の自信を持てるまでの環境にはなっていないと判断している。そうなるために必要だと筆者が考えるのは、①米国の景気が目立って減速したことを示すエビデンス、具体的にはGDP(国内総生産)や雇用統計といったメジャーな景気指標の下振れの累積、②米30年債利回りが以前のレンジにおいてしっかりした「天井」だった3.25%以下の水準に戻ること、以上2点である。

 米国のGDPは、前期比年率で見た場合、4-6月期の+4%台から7-9月期は+3%台に減速しており、アトランタおよびニューヨーク地区連邦準備銀行の予測モデルでは10-12月期は+2%台に伸びを落とす見込みである。だがそれでもまだ、米国の潜在成長率である+2%弱よりも高い。19年1-3月期に前期比年率+1%台半ば以下まで鈍化しそうなら、1-3月期にFRBが利上げを休止する(スキップしてこのところの四半期ごとの利上げペースを崩す)可能性が高まる。

数多くみられるリスクオフの材料

 ただし、経済指標で確認されずとも、FRBが利上げを休止するシナリオも考えられる。今後の米景気動向に大きな影響を与え得るのが、11月19・20日と2日連続で大幅安になるなど、このところ非常に不安定になっている米国株の動向である。

 すでに述べたように、「カネ余り」相場がついに終わるのではないかという不安心理が強まりやすい状況で、しかも、過半数を制した下院民主党による年明け後のトランプ大統領追及、米中貿易戦争の継続と中国経済のダウンサイドリスク、EU離脱合意案が英下院で12月11日に否決される可能性、イタリアの財政問題など、「リスクオフ」に市場が傾きやすい材料がこの先数多く見いだされる中、米国株が今後大幅に下落する可能性は、少なからずある。

 市場の大きな混乱に直面した場合には、パウエルFRB議長は「安全運転」を志向し、利上げを止めにかかるのではないか。ちなみに、住宅バブル崩壊の責任論が噴出するよりも前、FRB議長時代に「マエストロ」と呼ばれて尊敬されていたグリーンスパン氏の政策運営手法を、8月24日のワイオミング州ジャクソンホールでの講演でパウエル議長は称賛していた。グリーンスパン氏は株価急落時に金融緩和で積極的に対応したことで知られている。

 株価は急落リスクをはらむ展開が続くだろう。日米の長期金利はさらに低下し、100円ラインを脅かすほどの円高・ドル安進行が19年半ばにかけて起きるだろうと、筆者は引き続き予想している。