教育格差は、いっこうになくならないのでは

 次に、都市部で子育てした経験のある人なら容易にわかると思うのだが、子育てにかかる費用は多岐にわたるという、厳然たる事実がある。子どものさまざまな習い事や補習教育にかかる費用は決してばかにならない。ちなみに、筆者の子ども2人の場合、英会話教室、スイミングスクール、習字の3つはやらせていた(結果的に無駄な支出だった感は否めないが・・・)。そのほかに、リトミックも一時やらせていた記憶がある。子供将棋教室にも足を一度運んだが、息子にそうした方面の才能が全くないことがすぐにわかり、入会しなかった。

 そして、それらよりもはるかにコスト負担が大きいのが「お受験」である。私立の幼稚園や小学校を受けさせる場合、親の不安心理もあるため、どうしてもその分野の教育のプロに多額のお金を支払って、頼ることになる。模擬試験の費用も驚くほど高く、親が足元を見られている感が漂った。そうした状況下、習い事や補修教育と比べて相対的に金額が小さい保育所や幼稚園の費用負担が今回の政策でなくなっても、所得格差に由来する保育所・幼稚園外での活動も含めた教育格差(不平等)は、いっこうになくならないのではないか。

 さらに、無償化することによって、子どもを預ける必要性がそれほど大きくない家庭からも潜在需要が掘り起こされて、待機児童の問題が一段と悪化するリスクが否定できない。

「保育所のキャパを増やす方が先」との切実な声

 昔のことだが、老人医療が無料化された後、病院の待合室がお年寄りの談話室のようになってしまい、「きょうは○○さんが来てないね」「○○さんはきょうは体調が悪いらしいですよ」といった会話が病院の待合室で聞こえてきたというジョークが流行った。それと似たような不要不急の需要の掘り起こしを、幼児教育の無償化が行ってしまいかねない。保活で苦闘している親からは「無償化などしてくれなくていいから保育所のキャパシティーを一刻も早く増やしてほしい」といった切実な声があがっている。32万人分で足りるかどうか。

 以上、問題点のうち大きなものを3つ挙げたが、そのほかにも、学童保育のキャパシティー不足への対処など、子育てにまつわる政策課題はいくつもある。にもかかわらず、政治的にアピールしやすく反対を正面からぶつけにくい無償化政策の大枠が固まった。

 よく知られているように、いわゆる出産適齢期の女性の絶対数がすでに減少してしまったため、少子化対策を拡充して出生率を引き上げるだけで日本の人口減・少子高齢化の流れを食い止めるのは物理的に、もはや無理である。そして、最長5年にとどまる外国人技能実習制度に代表される日本の外国人受け入れ策は、何年たっても、踏み込み不足のままである。「1億総活躍」と言うが、このままでは2053年に日本の人口は1億人を下回る。