•  「店で客から『消費税は10%に上げるの』と言われ、『国で決めたことに従います』『もうこの店では買えないね』と嫌みを言われている。今から消費税再増税は厳しいと、プレッシャーを感じている」(南関東)(衣料品専門店)
  •  「消費税再増税がニュースになった途端、消費マインドに水を差す形になり、稼働が落ちている」(東京都)(都市型ホテル)
  •  「消費税再増税で客のマインドが下降する」(甲信越)(スーパー)
  •  「消費税の引き上げの政策は、確実に消費マインドを後退させる結果となることが予想される。消費税の引き上げには絶対反対である」(東海)(一般レストラン)
  •  「原材料価格は高値で推移し、加えて来年に控えた消費税の引き上げは、今後消費マインドを引き下げる影響の方が大きく、先行きも不安要素が多い」(東海)(食料品製造業)
  •  「住宅街にある店舗であり、高齢者が多数来店するが、年金制度や消費税の引き上げに対する不安を口にしている」(近畿)(コンビニ)
  •  「消費税の引き上げが具体的になってくると、必ず消費活動は冷え込む。さらに、現時点で消費の落ち込みへの対策として出てきている案に、使えそうなものがない」(近畿)(テーマパーク)
  •  「天候や気温に左右されやすいため、そこが安定すれば例年並みに動くと考えているが、消費税の引き上げの報道があったので客の購買意欲に悪影響が出る可能性を心配している」(四国)(衣料品専門店)

マクロと現場の乖離

 上記のような、いわば経済の「現場」から出てきているナマの声は、政策当局者やエコノミスト・経済評論家がマクロの数字を並べた上で「10%への消費税率の引き上げは大丈夫」と述べていることへの、反対意見になっているようにも思われる。

 筆者は、14年4月に5%から8%へと消費税率が引き上げられた際に、駆け込み需要とその反動の大小ではなく、実質可処分所得の明確なシフトダウンを根拠にして、景気には下振れリスクが大きいことを主張した、数少ないエコノミストの1人である。

 19年10月に予定される8%から10%への消費税率引き上げについて筆者は、「べき論」では引き上げにむろん賛成だが、投資家向けに予想する立場としては、内外経済・為替相場の状況にらみで安倍首相が再々延期を政治的に決断する可能性がまだ十分にあると、市場では少数派ではあるが、考えている(当コラム10月30日配信「首相はまだ『消費増税を最終判断』していない」ご参照)。

 10%への消費増税が景気に及ぼす影響についても、軽減税率やポイント還元などの対策ゆえに大丈夫だと楽観視するのは、危険である。そう考える根拠は、以下の3点である。

景気への好材料が尽きる時期と増税時期が一致する可能性

  1. 消費税率が10%という「初めて2ケタの数字になる」ことによる、消費支出抑制方向の心理的なインパクトが、高齢世帯・年金生活者を中心に小さくないと考えられること(上記で引用した景気ウオッチャーのコメント内容にも通じる話である)。
  2. これまでに出てきている消費増税対策には「マクロでの数合わせ」的な面がある。実質可処分所得が広範に切り下がる一方で、そうした対策など(消費増税分の使途になっている幼児教育無償化を含む)のメリットを享受する人々の数はそう多くなく、消費増税対策などのかなりの部分は、いわば「すれ違い」的な状況になると考えられること。
  3. 東京オリンピック前の建設関連を中心とする設備投資が一巡する時期と、米FRB(連邦準備制度理事会)が利上げをやめる場合に予想される大幅な円高・ドル安と、19年10月の10%への消費増税は、タイミングが一致する可能性があること。