最後の「単に長期金利を上げたら、経済にも金融機関にもプラスにならない」という単刀直入な発言には、強烈なインパクトがある。

 以前から筆者が主張していることだが、貸出金利が上昇基調になるなど経済の実情見合いで金利の環境が大きく変わっていれば話は別だが、そうはなっていない中で、市場金利だけを強引にスティープ化させようとしても、その度合い・持続性には難がある。

 また、金融システム全体の問題にならないように金融行政を運営している中心的な主体は、日銀ではなくて、金融庁である。そのあたりを見落としたまま、金融機関周りのことは何でも日銀が担当しているかのように書かれたマスコミ記事も散見される。

 上記の黒田総裁インタビューの内容は、債券などの金融市場には今一つ浸透していないようである。金融機関の収益面をサポートする目的で、日銀が近い将来にマイナス金利を解除したり長期金利ターゲットを持ち上げたりするというシナリオの実現確率はほぼゼロに等しいと、筆者はみている。

 むろん、それ以前に、2%の物価目標がはるかに遠いことや、日銀が金利引き上げに動く場合の円高リスクの大きさ、早すぎる金融引き締めを日銀にさせたくない安倍首相の意向といった、利上げを阻む大きな要因がいくつもあるのだが……。

 「物価安定の目標」2%を目指して粘り強く緩和を続けるのが、金融政策の「本線」「主役」である。ドライに言えば「脇役」である金融システムへの目配り(バブル生成・崩壊への警戒感を含む)ゆえに金利を引き上げるというのは、通常では考えられない、きわめてイレギュラーな政策運営である。

 しかも、やや繰り返しになってしまうが、黒田総裁が10月31日の金融政策決定会合終了後の記者会見で言及した通り、マクロおよびミクロの金融機関に対する規制そのものは金融庁が担当している。仮に金融システムに何らかの問題が発生した場合に、公的資金の活用などを取り仕切るのは、金融行政を担う金融庁である。

当面は現状維持で持久戦か

 そして、この記者会見で黒田総裁は、経済の持続的成長・物価安定に向けて日銀は努力するとしながらも、「地域の人口減とか、高齢化とか、それよりももっと大きいのは、企業数が地域で減っていること」への地域金融機関による対応の重要性にも、あらためて言及した。

 総裁以下日銀幹部が、このところあえて金融緩和の長期化による副作用への言及を増やしているのは、物価目標2%が遠い中でもカードが残り少ない追加緩和に追い込まれないための、一種の「方便」でもあるようにも、筆者には見える。

 円高リスクおよび政治サイドからの無言のプレッシャーゆえに、政策金利の引き上げを近い将来に日銀が敢行するのは不可能に近い。その一方で、最初のほうでバズーカをたくさん撃ってしまったため、追加緩和の手元カードが乏しい。

 したがって消去法的に、現在の金融緩和を持久戦的に粘り強く続けるというのが、日銀が当面たどる道筋にならざるを得ない。それを正当化するため、日銀が緩和長期化の弊害・副作用にことさら言及する機会が増えている、という構図である。