10月31日の金融政策決定会合終了後の記者会見では黒田総裁から、「将来の時点で何らかの調整を行う場合に、全体の要素全てが同時に調整される必要はありません。ETFの買入れはリスクプレミアムに対する働きかけですので、それはそれとして、全体のパッケージの中で、必要性について検討されていくことになると思います」という発言があった。将来のいずれかの時点でETF買い入れだけを切り離して何らかの調整を加えることに、一定の含みは持たせたものと受け止められる。けれども、そこからさらに踏み込んだ発言はなかった。

「アベノミクス」に不可欠の要素になってしまった印象も

 仮に、ETF買い入れの減額を考えているようなことをこのタイミングで黒田総裁がほのめかすと、足元の株価の堅調地合いを一気に崩してしまう恐れがある。その一方で、株価が大きく下落している際には、そうした示唆を行うことは事実上タブーだろう。日銀のETF買い入れは、株価上昇と為替安定を重視している「アベノミクス」にとって不可欠の要素になってしまっている印象を、筆者は受けている。

 日銀政策委員会のメンバーである審議委員の側でも、ETF買い入れに関する黒田総裁の上記の見解はしっかり共有されているようである。10月18日に函館で記者会見した桜井真審議委員は次のように述べた。

 「それからETFにつきましては、確かにこのところ株価が上がっていますが、現在、日本銀行がETFを通じて取得しているのは、株式市場の時価総額の大体3%ちょっとです。全体としてみれば、それほどまでに大きいとは考えていません。個別の銘柄では、大きなものもあるということは事実ですが、全体としてみるとまだその程度ですので、今のところ、特にETFについて何か変更する必要があるか考えるのはまだ早いのではないでしょうか」

日銀のレポートでは、株価下支え効果について全く触れず

 日銀が10月23日に公表した金融システムレポート(2017年10月号)を読むと、株価上昇に関して以下の記述がある。

 「足もとのドル/円レートの水準が2015年央と比べ円高であるにもかかわらず、株価が上昇しているのは、本邦企業の収益力の改善を市場参加者がポジティブに評価していることが背景にあると考えられる。日本株のPER が安定して推移していることを踏まえると、企業収益の改善期待に見合うかたちで株価が上昇していると評価できる」

 また、個別の「金融活動指標」について説明している部分には、「『企業設備投資の対GDP比率』と『株価』は、このところ足並みを揃えて上昇してきており、企業収益の改善期待が企業の投資拡大を後押ししている姿が窺われる」という記述もある。

 企業収益の改善が評価されて株価が上昇しているという説明(黒田総裁も10月31日の記者会見でそうした見解を口にしていた)であるわけだが、日銀自身が行っているETF買い入れの株価下支え効果について全く触れられていないのは、実に不自然である。