ところが2000年以降は、興行収入50億円以上・100億円以上いずれも、景気拡張局面で本数が多くなっている<■図1>。

■図1:興行収入が50億円以上および100億円以上になった映画の数(邦画・洋画計) 2000年~
■図1:興行収入が50億円以上および100億円以上になった映画の数(邦画・洋画計) 2000年~
注1:網掛け部分は景気後退局面(その年の過半数の月が景気拡張・景気後退いずれの局面かによって年ごとに判断)
注2: 2016年は10月末時点
(出所)日本映画製作者連盟、内閣府資料よりみずほ証券金融市場調査部作成

 日本の景気は、2012年11月に谷をつけた後は定義上、拡張局面が続いている(2014年4月の消費税率引き上げ後の景気の落ち込みに関しては、2015年7月24日に開催された景気動向指数研究会で、後退局面かどうかの判断が保留された)。

 過去2回の景気拡張局面では、興行収入50億円以上の作品が7つ以上となる年が必ずあった。また、興行収入100億円以上の作品が2つ以上の年があったというのも共通項である。

 これら2つの条件が、今年はすでに満たされている。映画興行収入にのみ着目して言えば、今年はようやく景気拡張局面の条件が満たされた年だと言えそうである。

景気のベクトルは、一応は上を向いている

 もっとも、そのことは足元の景気の拡張が力強さを伴っていることを意味しているわけではない点は、しっかり留意する必要がある。輸出は生産拠点の海外シフトや製品の競争力低下などから伸び悩み、個人消費は実質賃金の切り下がりなどから停滞し、設備投資は維持更新や合理化・省力化目的中心にとどまっている。野球で言えば「エースピッチャー」に例えられる、力強くて持続性が伴っている景気のけん引役が見当たらない低成長の中で、日本の景気はベクトルが一応は上を向いており、そのことを今年の映画の興行収入に関する統計がコンファームしたという話である。

 日常の生活者としての感覚を重視する異色の(?)エコノミストとして、映画の興行収入といった身近な統計を、筆者は今後もウォッチしていくつもりである。

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