個別の世代ごとに「刺さる」作品が公開された

 話を戻すと、興行収入が50億円以上になったのは、上記2作品の他に、邦画では「シン・ゴジラ」「名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)」「映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!」「ONE PIECE FILM GOLD」の4つ、洋画では「ズートピア」「ファインディング・ドリー」の2つで、全部で8つである。

 これらのタイトルを眺めると、シニア層の男性を中心に大ヒットした「シン・ゴジラ」がある一方で(筆者が小さい頃は親に連れられてゴジラやガメラの映画をよく観に行ったものである)、今の子どもが大好きな「妖怪ウォッチ」があり、高校生から大学生くらいの年齢層で大人気の「ONE PIECE」や「名探偵コナン」の映画があるなど、幅広い年齢層に働きかけるラインアップになっており、これがヒット作連発の背景にあることがうかがえる。個別の世代ごとに「刺さる」作品が提供されている上に、一部の作品は世代を超えてヒットしているという、おそらく理想的なパターンである。しかも、邦画と洋画のどちらかに偏ることなく、良質で人気の出やすい作品が提供されている。

2000年以降は、「景気回復時」に映画がヒットするようになった

 だが、ここでは個別の作品の評価にはこれ以上立ち入らず、映画のヒット作が多いことと景気動向(拡張・後退)の関係について見ておきたい。

 「映画館に出向いての映画鑑賞」という娯楽の位置付けが人々のライフスタイルの中で変化した結果、2000年以降は景気の拡張局面において興行収入50億円以上あるいは100億円以上の作品が多くなる傾向があるということを、筆者は当コラムで以前に指摘した(2014年5月9日配信「『不況期に映画大ヒット』の法則が逆転した?『アナ雪』」。拙著「トップエコノミストの経済サキ読み術」(日本経済新聞出版社)にも加筆して所収)。

 あらためて概略を説明すると、「不景気だから遠出をしたりせず映画を観にいく」か、それとも「景気の回復で懐具合が前よりは良くなったのでビデオが出るまで待たずに映画館に出向く」か。20世紀には前者の行動パターンが主流だった。だが、レンタルビデオやオンライン配信の普及を背景に、映画鑑賞という娯楽のコスト面での位置付けが変わり、21世紀に入ると後者の傾向が強まったというのが、筆者の考察である。

1999年頃までは景気後退局面で映画がヒットした

 日本映画製作者連盟のホームページで興行収入(1999年までは興行収入から映画館の取り分を差し引いた配給収入)が50億円あるいは100億円を超えるヒット作品がいつ、何本出たのかを調べて景気の局面(拡張・後退)と照らし合わせると、1980~1999年は配給収入が50億円以上の作品があった年は必ず、景気後退局面またはその前後の年である。配給収入100億円以上に限ると、1997年に1本(「もののけ姫」)、1998年に1本(「タイタニック」)で、1997年6月~1999年1月の景気後退と見事に重なっている。

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