日本の経済政策が政府による介入色をさまざまな部分で強めており、いわば「社会主義化」している。(写真:PIXTA)

 世耕弘成経済産業相は10月19日の閣議後記者会見で次のように述べて、クレジットカード会社に対して手数料の引き下げを要請する意向を表明した(共同通信の詳報から引用)。

 「日本がですね、このキャッシュレス対応の世界のトレンドに少し遅れているというのが事実でありますので、これを政策的にしっかり後押ししていかなければいけないというのが、これは消費増税に関係なくですね、進めていかなければいけない政策であります」

 「また一方でですね、これから具体的な対策の検討は行ってまいりますけれども、消費税にあわせてですね、キャッシュレスでポイント還元とか、あるいは値引きということが今、検討されているわけでありますけれども、ともかく導入しやすい環境を整えなければいけないというふうに思っています。日本で、いわゆるクレジットカードの導入などが進んでこなかった背景にはですね、やはり手数料負担が重いということもあったわけでありますので、今度、具体的にはこれから決めますけれども、いろんな選択肢を準備をしていく、キャッシュレス対応をしやすい環境を整えていく、中小の商店でもそういった対応ができる環境を整えていくという議論の中でですね、手数料を引き下げるなどの措置も検討しなければいけない。その際には、関係事業者にもですね、協力をお願いしなければならないというふうに思っています」

 世耕経産相は、①日本はキャッシュレス対応という世界のトレンドに少し遅れているから政策的に普及を促進する必要がある、②消費増税対策の一環としてキャッシュレス決済ならポイント還元・値引きをするための環境整備でクレジットカードを使える中小小売店を増やしたい、以上2つの政策的な狙いを踏まえて、クレジットカード会社に(小売店から受け取る)手数料の引き下げをお願いする、という論理構成をとった。

キャッシュレス対応に釈然としない理由

 だが、そうした考え方に、筆者は釈然としないものがある。

 まず①についてだが、世界的に伸びているキャッシュレス決済の手段は、スマートフォンを用いたものである(例えば中国におけるQRコード決済の普及)。

 雨宮正佳日銀副総裁は10月20日の講演で、「現在、急速に進む技術革新を背景に、各種のキャッシュレス決済手段、とりわけ、スマートフォンなどのモバイル端末を利用するモバイルペイメントが、世界的に拡大しています」と述べた。

 さらに、②について言えば、手数料の引き下げがテコになり、仮に中小小売店の側でクレジットカード決済用の端末を置く動きが広がったとしても、それによって消費者がそれらの店舗でクレジットカード決済を選択するケースが劇的に増加するとは考え難い。

 なぜなら、キャッシュレス決済になじみが薄い高齢層による決済手段選択が、そうした環境整備だけで、すぐにクレジットカードに大きくシフトするとは考え難いからである。そのことは、後ろの行列が長くなっていても気にせずに、スーパーのレジでお財布から小銭を一生懸命取り出して支払おうとしている高齢女性の姿を見れば、すぐに理解できるのではないか。