“自然体”な相場形成が行われにくくなった

 ところが、日銀の大規模なETF買いによって需給面から日本の株価は下がりにくくなったという認識が市場に浸透している最近は、為替が円高方向にまとまった幅で動いても株価はあまり下がらず、逆に上昇した<■図1>。健全な価格形成の機能が消えてしまった債券市場ほどではないにせよ、日本では株式市場においても、相場形成が自然体ではもはや行われにくくなっている感が強い。

■図1:東証株価指数(TOPIX)とドル/円相場
■図1:東証株価指数(TOPIX)とドル/円相場
(出所)日銀、JPX

 この現象を日本企業の業績の「為替離れ」で説明する向きもある。そうした側面が何割かあることは確かだが、日銀によるETF買いの効力を無視するのは市場の実態(現場)を見ていない議論だと言わざるを得ない。

 ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)との対比で言うと、筆者の使用しているモノサシによれば、足元の株価水準は明らかに割高である。

 株価指数が実体経済との対比でオーバーシュートしていることを警告し得る指標として市場でしばしば注目されるのが、東証1部時価総額の名目GDP(国内総生産)比である。米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が見ているとされる「バフェット指標」の日本版と言える。国内経済が生み出した付加価値というファンダメンタルズの裏付けが伴う部分を超えて株価が上昇する場合、この指標は100%を超える。直近データである今年4-6月期の名目GDP(542兆7744億円)と6月末の東証1部時価総額(593兆4957億円)で計算すると、109.3%という数字になる。

 ただし、日本企業の業績において海外での収益が占める比率が着実に上昇しているため、名目GDPではなく、日本企業の海外支店が稼いだ利益を含む名目GNI(国民総所得)の方が、株価と対比する実体経済の指標としては、より適していると考えられる。そこで、6月末の東証1部時価総額を4-6月期の名目GNI(560兆7569億円)で割って比率を計算すると105.8%。やはり100%ラインを上回っていることがわかる<■図2>。

■図2:東証1部時価総額を名目GNI(国民総所得)で割った比率
■図2:東証1部時価総額を名目GNI(国民総所得)で割った比率
(出所)内閣府資料より筆者作成

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