10月9日にホワイトハウスで大統領が記者団に述べたのは、以下の内容である(和訳は筆者)。

「私は彼らがしていることを好まない」

 「私は低い金利を望んでいる。FRBは自らが必要と考えることをしているが、私は彼らがしていることを好まない。それは、インフレが実際抑制されており、良いことがたくさん起きているからだ」
「私はそんなに速く(利上げを)進めるのが必要だとは思わない(I just don’t think it’s necessary to go as fast.)」「加えて、非常に重要視して私が考えているのは、われわれが作り出している(経済の)数字は記録的だということだ」 「ほんの少しにせよ、それが減速するのを私は望まない。とりわけインフレの問題がない時には」

 上記の大統領の発言は、利上げをこれ以上してくれるなという要請ではなく、利上げが必要だとFRBが考えていることを十分認識した上で、利上げのペースに不満を述べたものだと受け止めることもできる内容である。大統領はさらに、利上げの問題でパウエルFRB議長と個人的に協議してはいないことを明らかにした上で、「私は関与せずにいることを好む(I like to stay uninvolved.)」と述べた。

 ここで話が終わっていれば話は一区切りだったのだが、翌日以降もトランプ大統領のFRB批判が連発された。

 10日には、米国株の急落は長く待ち望まれていた調整だとしながらも、「FRBが行っていることに私は本当に同意していない」「FRBはクレイジーなことをやったと私は思う(I think the Fed has gone crazy.)」と述べた。

 11日には、「FRBのせいで、高い金利を払っている。FRBは大きな過ちを犯しており、これほどまでに積極的でないことを望む」とフォックス&フレンズのインタビューで述べたほか、米国株の下落について「FRBの利上げによるものだと思う」という認識を記者団に対してホワイトハウスで表明。「FRBは制御不能」「過度な引き締め路線は誤り」などと批判。もっとも、パウエルFRB議長を解任する意向はなく、単に失望しているだけだとした。

 その後16日には、自分の「最大の脅威」はFRBであると、トランプ大統領はFOXニュースのインタビューで発言。この時も、利上げのペースが速すぎるとして不満を示したが、FRBは独立しているのでパウエル議長とこの問題に関して話はしていないと強調した。

確かに一線は越えていないが

 こうしたトランプ大統領による連日のFRB批判について、クドローNEC(国家経済会議)委員長は、「大統領はFRBの独立性を尊重しており、FRBに具体的な政策を求めたり、指図したりしたことは一度もない」「大統領が心配しているのは金融当局の行動ペースが速すぎる可能性であり、そうなれば回復の障害になりかねない」などと述べて、一生懸命擁護している。

 たしかに、トランプ大統領はFRBの利上げペースが自分の考えより速いことへの不満を繰り返し表明しつつも、人事権などを用いての政策運営自体への具体的な介入は行っておらず、「一線は越えていない」と言える。11月6日の中間選挙に向けて、株価下落が共和党の議席数に悪影響を及ぼすのではという大統領の焦りが、FRB批判連発という形で表に出ているとみられる。

 米国における政府と中央銀行の関係は、日本のそれ(安倍首相と日銀のケース)とは明らかに異なる。どちらが最終的に良好な結果につながるのだろうか。金融市場発の危機再来の有無や財政規律の問題を含め、後年になってから「歴史の審判」が下るのだろう。

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