「首相周辺は『10%への引き上げによる財源を幼児教育無償化などに使うことが決まっており、基本的に再々延期はあり得ない』と断わりつつ、『憲法改正の国民投票を成功させるため、自民党内に増税の先送りを後押しに利用すべきだ』と主張する人はいる」と明かす(9月17日 フジサンケイビジネスアイ)。

 「景気悪化の兆しが見えているのに増税を強行し、日本経済に大きなダメージが及べば、元も子もない。政治的には19年夏に参院選が控えている。このため『“再々延期”のカードは首相の手中にある。政治や経済動向をぎりぎりまで見極める可能性がある』(政府関係者)との見方も出ている」(9月30日 読売新聞)

 自民党総裁選で勝利した安倍首相は最後の3年間の任期中に、「憲法改正の実現」という政治家としてのライフワークを最優先にして動くだろう。すでに述べたように、消費増税対策のメニューは需要の先食い的なものが多そうで、新味にも欠ける。

憲法改正に向けてリスク回避?

 10月9日、IMF(国際通貨基金)は世界経済の成長率見通しを2年3カ月ぶりに下方修正した。その背景にあるのは米国の度重なる利上げと、対中国を中心に執拗なまでに米トランプ政権が仕掛けている貿易戦争である。10日には米国の主要株価指数が2月以来の急落を演じ、翌11日には日経平均株価の下げ幅が一時1000円を超えた。

 11月の米中間選挙や米国との間でおそらく年明けから始まる物品貿易協定(TAG)交渉の行方をにらんだ為替相場の動きを含め、国内景気の下振れリスクがにわかに高まったとみれば、憲法改正に向けて不要なリスクはとりたくないと考える安倍首相は、自らの政治判断でちゅうちょなく10%への消費増税を再々延期するだろう。そうなる確率は決して低くないと、筆者はみている。

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