住宅や自動車の購買タイミングに影響を及ぼそうとする施策は、これまでも何度も実施されてきたため新味に欠ける。上記のうちやや目新しいのは、クレジットカードなどによってキャッシュレス決済をした場合のポイント還元制度である。

 もっとも、クレジットカードの使用による消費支出にポイントを付与するアイデアは、過去に一部で取り沙汰されたことがある。だが、広い範囲でクレジットカードによる買い物を有利にすると、現金でするはずだった買い物がクレジットカード払いにどんどん振り替わるだけで、消費者がネットで買い物をする金額はあまり増えないのではないかという疑問がつきまとう。また、クレジットカード会社に対して政府が補助をする形になってしまい、他のキャッシュレス決済手段とのバランスが悪い。

 さらに、中小小売店・商店街を主な対象として意識した販売支援策は、以前に地域振興券といったクーポン券の形で実施されたものと、政策の趣旨が重なり合う。

 今回は「キャッシュレス決済」の一層の普及を図るという政策目的を上乗せしての実施を、政府は想定しているのだろう。経済産業省によると、こうした決済が消費支出に占める割合は日本では約20%にとどまり、90%程度の韓国、60%程度の中国、50%程度の米国や英国を下回っている。

 だが、その原因として指摘されているのは現金選好の強さに加え、さまざまなキャッシュレスの支払方法があって統一されておらず、わかりにくいことである(8月28日 NHK)。この点がまず改善される必要があると言えるだろう。

 また、高齢層のIT(情報技術)リテラシーがにわかに高まらないと、結果としてこの人々が不利な立場に置かれること、北海道で大きな地震が発生して全域停電になった際に露呈した「キャッシュレス」社会の決定的弱点、すなわち電気が止まり電波が飛ばなくなった際に頼れるのは現金だけだという点についても、考えを及ばせておく必要があろう。

 10月に入ると、為替市場でドル円相場が円安ドル高方向にレンジを抜けて、一時114円台後半になった。日経平均株価は2万4000円台に乗せて、バブル崩壊後の高値を更新した。円安・株高は日本経済を短期的に浮揚させる。市場環境の面から言えば、10%への消費税率引き上げにいったんは追い風が吹いたことは間違いない。

外堀が埋まりつつある? 再々延期

 だが、マスコミ報道などを子細に見ると、10%への消費増税の再々延期というシナリオにつながり得る話が、断続的に出てきている。

  1. 日本商工会議所「中小企業における消費税の価格転嫁および軽減税率の準備状況等に関する実態調査」(第5回・9月28日発表)から浮かび上がった、準備の遅れ。軽減税率については81.2%の事業者が準備に着手しておらず、特に小規模事業者(売上高5000万円以下)では84.7%に達している。国がレジ購入などに用意した補助金の申請数は当初想定の2割強の約7万9千件で、日商は「また増税延期かもしれないと、投資をちゅうちょしている事業者も多い」とみる(共同通信)。

  2. 軽減税率導入に必要な財源(約1兆円)が、なお数千億円単位で不足している。毎日新聞は9月30日、軽減税率実施に必要な財源(年間約1兆円)の不足分である数千億円の一部に、小規模な免税事業者の手元に残る「益税」(事務負担軽減のため顧客から受け取った消費税の納付を免除された額)を充てる方向で政府が検討に入ったと報じた。免税事業者の益税は年間約3500億円。だが、23年10月にインボイス(請求書)制度が導入された後になってはじめて、益税の回収が可能になるという話にすぎない。回収可能な金額が不明確である上、インボイス導入までは財源にならない。

  3. 政府・与党内に「消費増税10%再々延期」の可能性に言及する向きがある。次のような関連報道が出てきている。

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