安倍首相は10月15日午後、消費税率を来年10月1日から予定通り10%に引き上げると表明した  (写真=AFP/アフロ)

 今から1年ほど後、19年10月に予定されている10%への消費税率引き上げ。筆者の周囲では実感がまだぜんぜんわかないという声も少なくない。税率引き上げは予定通りにあるのかと、機関投資家の方から質問をいただくこともある。

 自民党総裁選が終わった直後の9月20日の記者会見で、安倍晋三首相は消費税率について「予定通り引き上げていく考えだ」と明言した。

 一方、内閣改造後の10月2日の記者会見では、「全世代型の社会保障改革」に今後3年間で取り組むとしつつも、その財源となるべき消費税の税率引き上げには言及しなかった。

 読売新聞は10月14日、安倍首相が19年10月の消費税率引き上げを予定通り実施する方針を固め、15日の臨時閣議で表明して増税の影響を和らげる対策の検討を指示すると報じた。安倍首相は15日午後、消費税率を来年10月1日から予定通り10%に引き上げることを表明した。だが、ムニューシン米財務長官が日本との物品貿易協定(TAG)に競争的な通貨切り下げにつながる政策を禁じる「為替条項」を盛り込みたい意向を明言するなど、為替相場および景気の先行きは19年にかけてきわめて不透明である。

 また、ロイター通信は10月12日、「複数の与党筋は、消費増税延期とセットで19年夏の参院選が衆参同日選に変更されるシナリオに言及する声が自民党内にあると話す」と報じている。

 財政規律の緩みに対して債券市場が警告シグナルを発する機能は、日銀が大規模な長期国債買い入れを行っているため、実態として日本では消滅してしまっている。また、「アベノミクス」の下で税収の上振れがこのところ続いていることも手伝い、海外の有力格付会社が消費増税の有無を日本国債の格付けの判断で重視しようとしている兆候は見当たらない。

 菅義偉官房長官が8月21日の講演で「携帯電話料金を4割程度引き下げる余地があるのでは」と問題提起したことが、10%への消費増税を庶民に飲ませるための「甘味剤」だという見方もある。

新味のない反動減対策

 しかし、「だから19年10月の消費増税は予定通りで決まりだ」という結論にはならない。過去の事例を見ると、15年9月15日の経済財政諮問会議で、安倍首相は高市早苗総務相(当時)に携帯電話料金の引き下げ検討を指示した。けれども、翌16年の6月1日には消費増税の再延期がアナウンスされたという経緯もある。

 消費増税を予定通りに実施するとした場合、まず政府の経済政策の課題になりやすいのが、増税に伴う景気への悪影響を打ち消すための施策(反動減対策・需要平準化策)である。今回はどのようなものが浮上しているのだろうか。

 結論から言うと、新味がある上に規模が大きなものは、ほとんど出てこなさそうである。経済産業省内では「恐らく過去のメニューとほぼ同じになる」(幹部)との声が漏れており、ある幹部によると、エコポイント制度はエコカー減税と違ってさまざまな手間が必要になり、そうした手間がかかる分だけ財政面でも余計にコストがかかるので、エコポイント制度よりもエコカー減税の方が効果は大きいのだという(8月27日 時事通信)。

 19年度予算の概算要求はすでに締め切られたが、消費増税に備えた景気対策は別枠扱いのため、概算要求では計上不要の特別扱いである。そうした対策で、水面下で検討が進んでいるものとして、9月1日に日本経済新聞は以下のように報じた。

 「反動減対策として挙がるのが、買い控えが起きやすい住宅や自動車といった高価格商品の下支えだ。減税による支援を想定する。中小企業や商店街でクレジットカードなど『キャッシュレス決済』した場合に、消費者にポイントで還元する助成制度も検討する。このほか、一定の条件を満たした家電の購入を支援する構想も議論されている」