格付けというのはそもそも、信用状態に関する投資判断のための評価指標であり、債券の場合は元利金が支払われる確実性の評価である。したがって、財政規律に関する(少なくとも現時点で)一般的な見方との間でずれのようなものが生じることがあっても、おかしくはない。

 しかしながら、日本の場合、日銀による大規模な長期国債買い入れを主因に、債券市場が財政規律の緩みに対して警告シグナルを発信する機能がほぼ失われてしまっているので、財政規律を重視する立場からは、債券市場からは出なくなった警告を格付会社が代わりにしっかり発信することへの期待感が広がりやすい。

「人づくり革命の財源にあてれば、中期的に経済成長に寄与」

 けれども、そうした期待感は、上記のロイター記事に加えて、それよりも前に日本経済新聞が9月28日朝刊に掲載した記事「財政黒字化目標先送り 国債格付けに影響せず」によって、完膚なきまでに打ち砕かれた。

 日経新聞の記事には、ムーディーズのグズマン氏に加え、もう1つの米有力格付会社S&Pグローバル・レーティングのキムエン・タン氏が登場した。同氏は日経新聞の取材に対し、「安倍首相の表明は、当社の日本の格付けに影響しない」と明言した上で、「増税分の使途を変えて人づくり革命の財源にあてれば、中期的には日本経済の成長に寄与する」という肯定的な見解を表明した。

 ここで、消費税率のこれまでの推移と今後の予定を整理しておきたい。1989年4月の導入時を含める場合、税率の変更4回の平均変化幅は+2.5%ポイント。消費税が政治の世界で国政選挙に負けやすい「鬼門」とされてきたことや、景気が大幅悪化した時期をはさんだこともあるが、税率引き上げのインターバルは単純平均で10.2年というきわめて長い期間である<■図1>。

■図1:消費税率の推移
1989年4月 1997年4月 2014年4月 2019年10月(予定) 平均
税率 3% 5% 8% 10% ──
変化幅 +3% +2% +3% +2% +2.5%
インターバル ── 8年 17年 5.5年 10.2年
(出所)財務省資料より筆者作成

2053年に消費税17.5%では、社会保障関係費をまかなえない

 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が今年4月10日に公表した最新の「将来推計人口」によると、日本の人口が節目である1億人を割り込むのは2053年である。従来の推計から5年後ずれしたが、人口減少の大きな流れに変わりはない。予定されている次回の消費税率引き上げは2019年10月なので、そこからは33年ほどある。

 上記のインターバル(10.2年)を単純にあてはめると、消費税率の引き上げはあと3回で、その時の消費税率は10%+2.5%ポイント×3で17.5%となる。人口減・少子高齢化を背景とする社会保障関係費をまかなうため、消費税率は最低でも欧州の付加価値税(VAT)税並みの20~25%は必要だという見方が学者などの間では一般的だが、その水準には届かない計算である。