いつまで働きたいですか?(写真=PIXTA)

 9月24日の朝刊に掲載された日経新聞・テレビ東京による世論調査(9月21~23日実施)で、自民党総裁選における安倍首相3選を「よかった」と回答したのは55%で、安倍内閣支持率である55%と一致(支持率は8月下旬の48%から上昇)。また、安倍首相を「信頼できる」と回答したのは「大いに」「ある程度」の合計で57%だった。

 それよりも興味深かったのは、年金や定年といった老後の生活に関する部分の回答内容である。まず、首相に期待する政策(複数回答)では、「社会保障の充実」が49%で最も多く、「景気回復」(45%)、「教育の充実」(31%)、「外交・安全保障」(30%)などが続いた。19年1月まで持続すれば今回の景気拡張局面は戦後最長になるのだが、かなり多くの国民には景気回復の実感がいまだにない。

 「社会保障の充実」を望みつつも、政府が検討している公的年金の受給開始を70歳より後にずらすと毎月の支給額が今より増える制度については、「反対」が57%で、「賛成」33%を大きく上回った。

年金問題は政権の鬼門

 検討されているのは選択制の新たな受給コースであり、現在は希望に応じて70歳まで年金受給開始を遅らせることができる(代わりに毎月の受給額は増える)制度を、75歳以上まで遅らせるのが可能なように変えて、選択の幅を広げる案である。年金受給の開始年齢が一律に70歳や75歳まで引き上げられるわけではないのだが、半ば直観的に「70歳から受給」に否定的に回答した人が、少なからずいたのではないか。

 この問題で思い出すのが、年金受給開始年齢引き上げで、ロシアのプーチン大統領が支持率を大きく落としたことである。国を問わず、老後の生活における資金繰りは人々にとって文字通り死活問題であり、取り扱いを誤ると政治的なパワーは大きく減りかねない。

 ロシアの場合、プーチン政権が今年6月、年金受給開始年齢を男性は60歳から65歳、女性は55歳から63歳へと大幅に引き上げる改革案を発表したところ、80%台だったプーチン大統領の支持率は15%ポイントほど急落し、年金改革に反対するデモが数多くの大都市で発生した。そうした国民からの強い不満の表明をうけて、女性の受給開始年齢は63歳から60歳に変更されたものの、男性は65歳で当初案のままである。9月23日には、ロシアの地方選が予想外の結果になった。

 極東にあるハバロフスク地方とモスクワ東方のウラジミール州で知事選の決選投票が行われ、プーチン政権の与党である統一ロシアの候補がいずれにおいても敗北したのである。勝ったのは極右・自由民主党の候補だった。それでも、年金改革法案は下院に続いて上院でも10月3日に賛成多数で可決され、プーチン大統領の署名を得て同日に成立した。

 ここで問題になるのは、平均寿命との兼ね合いである。よく知られている話だが、ロシアの男性はアルコール度の高いお酒であるウォッカをよく飲むため、平均寿命が短い。旧ソ連崩壊直後に比べれば経済が改善しているためロシア人の平均寿命は毎年延びてきているものの、17年上半期時点で72.4歳(男性は66.5歳、女性は77歳)だという。ということは、この先どこまで平均寿命が延びるかにもよるが、改革が実施されれば、年金をほとんど受給しないまま亡くなる男性が珍しくなくなると考えられる。

 日本の場合、平均寿命は17年時点で男性81.09歳、女性87.26歳まで長期化した<図1>。一方、公的年金の受給開始年齢は60歳から段階的に引き上げられつつあり、男性は25年、女性は30年までに65歳になる。「老後はゆったり」の時間的余裕が日本ではまだかなり残っているようにも見える。