こうした流れを振り返ると、米国が日本と交渉する場合にも「為替条項」がテーマになる可能性がある。米国の自動車業界では以前から円の対ドル相場水準について不満がくすぶっていることも、陰に陽に影響してくるだろう。

 仮に、日本が米国と2国間協定を結び、それに「為替条項」が含まれる(ないし付随する)場合には、潜在的に大きな円高材料になる。為替相場が円高ドル安方向に大きく動いた場合でも、日本による競争的な通貨切り下げではないかという疑義を米国側が抱きかねない円高阻止策、たとえば具体的には、金額の大きい円売り介入、日銀による追加緩和、何らかの資本規制を発動するのが、米国との関係上、現実問題としてきわめて困難になると、市場は考えるからである。

 日米貿易摩擦が激化しかねない厳しい情勢に直面しつつある日本政府内では一時、トランプ大統領と安倍首相の個人的な信頼関係に期待し、訪米時に時間を作って一緒にゴルフをするなどして大統領の姿勢軟化を引き出せないかという「構想」が浮上していたという。

トランプ大統領の日本車嫌いは筋金入り

 だが、そうした考えは甘すぎる。トランプ大統領の「日本車嫌い」はいわば筋金入りであり、個人的な信頼関係の有無とは切り離して交渉を進める可能性が高いだろう。実は15年6月の大統領選出馬表明時にも、トランプ氏は『日本車叩き』のトークを発していた。その後も日本車に厳しい発言が飛び出したことがある。

 「なんでもいい、我々が何かで日本を打ち負かしたことがあるか? 日本は何百万台もの車をアメリカに輸出している。一方、我々は? 東京でシボレーが走っているのを最後に見たのはいつだ? みんな聞け、そんな光景は存在しないのだ。日本人にはやられっぱなしだ」(15年6月16日 トランプタワーで共和党大統領候補指名争いへの出馬を表明した際の発言)

 「米国(の自動車メーカー)は日本国内で車を販売できないのに、日本は米国に何十万台の車を輸出している」「この問題については協議しなければならない」(17年1月23日 企業経営者らをホワイトハウスに招いた朝食会での発言)

 そして、9月20日の自民党総裁選で安倍首相が勝利して3年間の任期を手にし、国内の政治状況に一区切りついた後、政府は米国との貿易問題で「現実路線」に切り替えた。

 日本経済新聞は22日朝刊の1面トップで「対米関税協議を視野 政府、車への発動回避狙う 農産品はTPP水準維持」と報じた。「政府は米国との2国間の関税協議を視野に入れ始めた。トランプ米大統領は日本に貿易赤字の削減を繰り返し要求、2国間の関税協議を迫っているためだ。日本側はこれ以上の時間稼ぎは同盟関係にも影響しかねないとの判断に傾いた。2国間の関税協議を受け入れたほうが自動車の追加関税を回避しやすくなるとの読みもある」という。

次ページ 韓国は為替条項で合意したのか?