1. 「米中貿易戦争」の激化という材料自体は、それによる実際の経済への影響などはともかく、すでに織り込み済みだという基本認識が市場にあること。

  2. 米国の制裁関税第3弾は年内の税率が10%にとどまり当面の自国経済への配慮がなされているほか、中国の報復措置は「及び腰」の印象があり(個別の米企業をターゲットにしたいわゆる「質的」な報復は含まれなかった上に、李克強首相の発言内容も総じて温和)、米国よりも立場が弱い中国側に、そう遠くない将来に妥協点を見出そうとする姿勢が見え隠れしていること。

  3. 関税引き上げによる輸入品の値上がり圧力に対して、ドル高による輸入価格の下落圧力がカウンターで効いてくること(8月の米輸入物価指数は前月比▲0.6%で、2カ月連続の下落である)。

  4. 関税引き上げで消費財に値上がり圧力が加わっても、米国の個人消費が大きく崩れない方向に作用する要因が複数見出されること(「トランプ減税」の一環である所得減税、株高による資産効果、クリスマス商戦の値引きなど企業のマージン圧縮による対応)。

 上記の諸点を踏まえつつ、金融市場関係者はこの先も情勢見極めを図ることになる。

貿易戦争は「株安・債券高」の材料

 けれども、貿易戦争は世界経済全体にとっては明らかにネガティブであり、根本的には「株安・債券高」の材料だという基本線には変わりがないと、筆者はみている。このところの株高はリスク要因を軽視しすぎている感が否めない。米国の金融政策など他の材料がどうなるかにもよるが、米国株がまとまった幅で下落する場面がいずれやってくるだろう。

 そうした中、トランプ大統領が通商問題で次に「ケンカ相手」にするのは日本ではないか、日本製自動車に追加関税を課すぞと脅しをかけつつ、農産物を含む一層の市場開放を含む2国間の自由貿易協定(FTA)の締結を日本に対して強く迫ってくるのではないかという見方が、夏から秋にかけて市場で徐々に広がった。

 トランプ大統領は9月7日、大統領専用機内で記者団に対し、米国との貿易協議で「(新しい)合意に達しなければ日本は大変な問題になると認識している」と発言。「日本との貿易協議に本腰を入れてこなかった唯一の理由は中国と協議していたことだ」としつつ、オバマ前政権下で日本が米国との貿易交渉に応じなかった理由は「日本は何も報復がないと思っていたからだ」と述べて、何らかの報復措置を「レバレッジ」(交渉を進めるためのテコ)にしながら日本に合意を迫るつもりであることを示唆した。

 米国はNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉をメキシコ・カナダと進める中で、順調に協議が進んできたメキシコとの間では「為替条項」の導入で合意した。

 これより前、韓国と結んでいる米韓FTAの見直しでは、「為替条項」をFTA本体ではなく付帯条項として強制力を持たせずに導入することで大筋合意したと、3月27日に米政府が発表した。

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