債券市場では、短期および中期ゾーンで日銀の金融政策運営が主要な材料になる一方、長期および超長期ゾーンではそれに加えて、今後想定される景気や物価動向、財政規律の強弱といった多様なリスクファクターが織り込まれて、相場水準が形成される。

 そして日銀は、市場が想定している景気・物価の今後をイールドカーブ(利回り曲線)の形状などから貴重なシグナルとして読み取り、景気後退の懸念が出ていないか、インフレ面の対応で政策運営が誤っている恐れはないかなどをチェックする。また、国債を発行している政府の当局者は、財政規律の緩みを債券市場が警告する形で超長期ゾーンを中心にリスクプレミアムが拡大して金利が上昇する場合、その事実を真摯に受け止めた上で、財政規律を維持しようとするメッセージを何らかの形で示すのが常である。

債券市場は「日銀依存の需給相場」と化している

 このような政府・日銀のありようと密接に関わっている債券市場が備えているべき機能が、異次元緩和の下ではほとんど失われてしまっている。日銀と市場関係者の意見交換会などの場では、「このままでは債券市場の貴重なインフラが失われてしまう」というような危機感が込められた発言が市場関係者の側から数多く出てくるが、「アベノミクス」の一環で「物価安定の目標」2%の達成を金科玉条としている今の日銀には通じるはずもない。

 日銀短観(短期経済観測調査)や鉱工業生産といった主要な経済指標の数字をチェックする債券市場のディーラーやトレーダーは著しく減っており、それらの発表日を知ろうとしない人も少なくない。債券市場が「日銀依存の需給相場」と化しており、経済指標は相場を動かす材料にならないからである。債券市場の機能低下は日々じわじわと進んでいる。

 では、株式市場はどうだろうか。「株価上昇=善」と固く信じているかのようにコメントする人が圧倒的に多いこの市場の関係者の間からも、日銀の異次元緩和の一環である年間約6兆円のETF(上場投資信託)の買い入れによって、株価指数が不自然に高止まりしたり、特定銘柄の浮動株が減少して相場水準がゆがんだり、日銀の間接保有比率が上昇して「物言わぬ株主」の比率が上がったりするのを問題視する声が、最近は増えている。

TOPIXはファンダメンタルズ対比で割高感

 ファンダメンタルズとの対比で考えた場合、東証株価指数(TOPIX)には割高感がある。筆者は以前から、「マネー経済」の代表的な数字として東証1部時価総額を取り上げる一方、実物経済の代表的な数字として名目GDP(国内総生産)、および日本企業の海外支店収益も含んでいる名目GNI(国民総所得)に注目し、両者の比率を見ることによって「TOPIXがファンダメンタルズ対比で割高か割安か」を推し量るツールにしている。ここで、いわゆる「バフェット指標」の計算方式である名目GDPとの対比だけでなく、名目GNIとの対比も独自の発想で行っているのは、日本でも大手企業を中心に海外収益比率が上昇しており、これが株価に反映されている実態を考慮したものである。

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