昨年8月頃、消費冷え込みを予期していた人も

 実は、「スーパー」については先行き判断DIの方が、現状判断DIよりも3か月早い2015年8月に、44.5に急低下していた(前月比▲6.9ポイント)。そしてそのまま50未満で推移し、2016年6月には40も一時的に下回った。

 2015年8月にスーパーのウォッチャーから寄せられた先行き判断に関するコメントには、「株価の下落や原材料費高騰による商品の値上げなど、客が消費を抑える要因が多く、生活防衛意識が強まり、個人消費の冷え込みが始まる」(中国)、「今後も商品の動き自体が良くなる要素がほとんどなく、食料品においてはやはり値上がりした商品自体が売れにくくなっている。今後もあまり伸びないと予想している」(九州)といったものがあった。

 2015年8月というと、中国発の「人民元切り下げショック」が発生し、円高・株安が急速に進んで、景気の先行き不透明感が強まった月である。また、同年11月にはパリで同時テロ事件が発生した。だが、これらのイベントや気温の変調は消費者の節約志向を強める追加的な材料になった部分はあったにせよ、消費低迷の主因ではないと筆者はみている。

消費低迷の主因は、実質賃金の水準の低迷

 繰り返しになるが、低迷の主因は実質賃金の水準(消費者が体感している購買力の大きさ)が、待てど暮らせどさっぱり持ち上がってこないことだろう。しびれを切らした消費者は2015年11月ごろから、スーパーでの購買行動で、慎重姿勢にはっきり傾斜した。そして、スーパーのウォッチャーはその3か月前に、そうした流れになりそうだということを、おそらくプロの肌感覚から予期しており、11月になって実際に変調を目にしたと考えられる。

 6月8日に日経MJ(日経流通新聞)が掲載した「2016年上期ヒット商品番付」では、「安値ミクス」が東横綱になった。消費者が再び安値志向に傾斜していく中で、低価格が強みの小売店が好調だというのが、その理由である。日銀流に言えば、デフレマインドが再度強まってきたということにほかならない。

デフレ最盛期の「主役たち」が再集結

 販売価格を引き上げた後の顧客離れをうけて、大手衣料品会社のユニクロは今年2月、今度は価格の引き下げに踏み切った。大手牛丼チェーンの吉野家では今年4月、牛丼よりも価格が安い豚丼が復活した。ファミリーレストランは低価格メニューの拡充により、来店客数の減少に歯止めをかけようとしている。そして、日本マクドナルドは9月中旬から、平日のランチタイムに400円のセットメニューを投入すると発表した。

 デフレ最盛期の「主役たち」が、見事に顔を揃えた形である。実質賃金の水準低下が消費低迷を長引かせる中、日銀の「物価上昇2%早期実現作戦」は、明らかに頓挫した。

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