「フィットネスクラブ」の売上は低迷傾向

 一方、中間所得層の消費動向を探る目的で筆者が以前からウォッチしている「フィットネスクラブ」売上高(経済産業省「特定サービス産業動態統計」に含まれている)は、昨年11月・12月に記録した前年同月比+4.5%がピーク。その後は6月の同+1.4%までプラス幅が縮小しており、消費の低迷と整合している<■図2>。

■図2:特定サービス産業動態統計 「フィットネスクラブ」売上高
■図2:特定サービス産業動態統計 「フィットネスクラブ」売上高
(出所)経済産業省
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個人消費が景気をけん引する可能性は乏しい

 個人消費の変調は、勤労者1人当たりの実質賃金の水準が大きく下方にシフトしたまま(つまりもらっている賃金の購買力が落ちたまま)であることが最大の原因だと、筆者は主張し続けている。

 9月5日に厚生労働省が発表した7月の毎月勤労統計調査速報で、現金給与総額(物価で調整する前の名目賃金)は前年同月比+1.4%、実質賃金は同+2.0%になった。筆者がより重視している両者の季節調整済指数(2010年平均=100)を見ると、現金給与総額は101.5、実質賃金は97.6である<■図3>。

■図3:毎月勤労統計 季節調整済指数 現金給与総額、実質賃金
■図3:毎月勤労統計 季節調整済指数 現金給与総額、実質賃金
(出所)厚生労働省
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 振れを伴いつつこのところ水準を切り上げているが、実質賃金は以前に推移していた100前後の水準まで距離がまだある。しかも、企業収益が減少に転じているため、賃金の今後の増加余地はどうしても限られる。個人消費が景気をけん引するシナリオは、実現する可能性が乏しいと言える。

消費の「変調」が認識されたのは、昨年11月頃か

 ところで、スーパーの店頭といった消費の「現場」で変調が認識されるようになった節目の時期は、どうやら昨年11月頃(およびその3か月前である8月)のようである。

 日本経済新聞は7月1日の朝刊に、「食品・日用品主要80品目 4割超が値下げ 砂糖や缶ビール、消費者の節約志向映す」と題した記事を掲載した。小売店はセールを増やしたり値下げ幅を広げたりしており、消費者が節約志向を強めていることが浮き彫りになっているという。この記事の中に「スーパー(既存店)の食料品売上高は今年5月まで14か月連続の前年同月比プラスだ。ただ伸び率は鈍化傾向にあり、小売りや卸の経営者は『2015年11月ごろから消費動向が変わってきた』と口をそろえる」という記述があり、筆者は大いに注目した。経済統計からも一定の裏付けが得られる話だからである。

 景気ウォッチャー調査に含まれている分野・業種別DI「スーパー」を見ると、現状判断は2015年4月に59.0でピークをつけた後は低下基調。同年9月に50.5、10月に49.5.まで下がったが、この時点ではまだ好不況の分岐点である50近辺で持ちこたえていた。しかし、次の11月分で42.4に急低下し、悪化のトレンドが決定的になった<■図4>。上記の記事にある消費動向変調のタイミングと、見事に合致している。

■図4:景気ウォッチャー調査 分野・業種別DI 「スーパー」
■図4:景気ウォッチャー調査 分野・業種別DI 「スーパー」
(出所)内閣府
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 その2015年11月にスーパーのウォッチャーから寄せられた現状判断に関するコメントには、「先月までは堅調に推移していたが、今月の異常な暖かさで季節商材の動きが極端に鈍くなり、全分野で苦戦が続いている」(近畿)、「加工食品などが値上がりしたため、販売点数が減少して前年実績に届いていない」(中国)といったものがあった。

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