
(C)中国
<米国と対立する上での強み・対抗するためのカード>
- 世界第2位の経済規模を有しており、グローバル展開している米企業の生産拠点としてのみならず、製品・サービスの販売先としての重要度もかなり大きい。
- 高率関税への報復措置として、中国に進出している米国企業に対し、選別的に打撃を与えることが可能。
<米国と対立する上での弱み>
- 高率関税をかけあう「米中貿易戦争」では、中国の米国からの財輸入額が17年は1304億ドルで、輸出額の5063億ドルを大きく下回る(米商務省・国際収支ベース)。高率関税対象の拡大競争では勝てない。
- 外貨準備として中国は米国債を大量保有(6月末時点で1兆1787億ドル)。だが、これを売却して金利上昇により米国にダメージを与えようとすると、保有する残りの米国債が大幅に値下がりしてしまうため、武器には使えない。
IT分野の覇権争い断念がかぎ?
<事態の収拾につながると考えられる出来事>
- 習近平国家主席肝いりのIT戦略国家プロジェクト「中国製造2025」が事実上骨抜きになるような形で中国が米国に屈服し、IT分野で次世代の覇権を握ろうとするのを断念すること。
- 中国製品への高率関税が値上がりを通じて米国の消費者の不満・トランプ大統領の支持率低下につながり、米国が短期的には矛を収める選択をすること。
事態の収拾につながると考えられる出来事として筆者が挙げたことはいずれも、米国と対決している指導者たちのメンツが丸つぶれになるケースである。たとえば習近平国家主席が「中国製造2025」の撤回やグレードダウンを内々にトランプ大統領に確約する場合でも、情報が洩れれば国内で反習近平の勢力が国辱だとして批判を強め、政治闘争に発展する可能性もあるだろう。
クリスマス商戦向けの中国製玩具が値上がりするなど、貿易戦争が日々の生活に悪影響を及ぼすようだと、米国の世論が変化し、消費マインド指数が悪化、トランプ大統領の支持率が下がるかもしれない。だが、足元で出てきている米国の各種消費マインド指標の多くは、ヒストリカルに見れば高い水準にとどまっている。また、大統領の支持率は足元でやや下がったが、おおむね40%台前半をキープしている<図1>。
したがって、米国とこれら3カ国の対立状況のクリアな解消は、当面見込めないと言わざるを得ない。対立している状態が、半ば常態化するイメージである。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「上野泰也のエコノミック・ソナー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?